八尾の蚕と八幡様。(+α曳山)
姉倉比売神社・おわらの胡弓の記事で書いたように、
この八尾は養蚕で栄えた地域だ。
八尾の蚕種は非常に質が良いと言われ、
全盛期には全国シェアの1/4を誇ったと言われている。
また、今でこそどこにでも薬局があって
家庭の「配置薬」というものは勢力を弱めつつあるが、
「富山の薬売り」というのは言葉としては御存知ではないだろうか。
その、薬だけでなく薬を包む和紙でも富山は収益を上げていた。
というわけで、
後で写真を載せる曳山を見ていただければ分かるように
富山の祭りは庶民が築いた文化とはいえかなり豪華絢爛なのである。
*若宮八幡宮の蚕手水鉢*
さて、まぁ豪華絢爛は置いといて
その大事なお蚕様を守るために
人々はやはり神様にお願いしたのである。
中でも大きな神社として残っているのがこちら
「若宮八幡宮」。
朝日で 鎮守の森が青々と照らされ
まだ夜のあいだ人が踏み入らなかった静かな空気。
早朝の神社は気持ちがいいなー(*´ω`*)
※朝には弱い方だが、寝ていないので早朝に行けた。
さて、お目当ては手水鉢なのだ↓
繭型の鉢!蚕の口から水が出る!
(ちょっと、蚕の土台が雑なのが玉に瑕)
ぜひお金が集まったら土台もうまいこと蚕っぽくしてほしい。
拝殿のほうに進んでいくと、何かの石碑がある。
…タ、タイムカプセル…だと…?
そうか、ほんとのタイムカプセルってやつは
小学校で埋めて高校で掘り出すレベルじゃないのか。
2093年て…気が遠くなりそうだよ。
狛犬は結構古そうな感じで
顔が劣化気味。
さて、こちらの扁額。
拝殿の真ん中はもちろん「八幡宮」だが、
この左の扁額には「蠺羪宮」と書かれている。
なんだか画数が多いが「蚕養宮」の繁体である。
そもそもなぜここが「若宮」八幡宮なのかといえば、
元は「蚕養社」という神社だったこの社殿に
お隣の八幡様から八幡神をお招きしたからなのである。
なので今でこそ八幡様の表札はかかっているが、
蚕の守り神様のほうが古参なのである。
早朝とはいえ、雰囲気がある。
社殿の中の釣燈篭にはカイコガや桑葉が彫られているらしいが
残念ながら中はうまく覗けなかった。
例祭など拝殿が解放されているときにまた行ってみるしかあるまい。
(今回思ったのだが、前橋から富山は2時間ほどだから近い)
*八幡様と曳山祭り*
さて、こちらが先ほどの
若宮八幡の八幡神の実家(?)八幡宮である。
さほど離れていないのだが、
コチラは杜が深くないせいか近づきやすい雰囲気。
「人の世界寄り」とでも言おうか。
とはいえ、社殿はなかなか年季が入っている。
そしてこの八幡様の春季例祭として行われるのが
「八尾曳山祭」なのである。
実際の祭りは5月の頭に行われるが、
曳山展示館でのステージを見に行った際に
写真を撮ってきたのでそちらを何枚か載せてみる。
まず、群馬の祭りばかり行っていると
「獅子舞は三頭が当たり前」
みたいなアタマになってくるが富山は二頭。
コチラ↓の角があるのがオスである。
そして、こちら↓がメス。
白髪(?)交じりの長いタテガミからのぞく
爛々とした目が迫力がある。
顔立ちとしては、
よく年賀状に書かれる伎楽系獅子舞寄りだろうか。
(あの赤い顔で緑の布をかぶってやるやつ)
ちなみに、あの伎楽系獅子舞も
一頭だと思われることが多いが雄雌がいる。
ちなみに、今回の八尾の雌雄獅子は分からないのだが
あの伎楽系獅子頭のオスは「宇津(うづ)」
メスは「権九郎(ごんくろう)」という名前なのだ。
男らしすぎないか!?ホントにメスだと思って名付けた?
というのが、個人的にすごいインパクト強かった。
八尾曳山祭では、
絢爛な曳山に先立って獅子舞が道を清め
そこを神輿が御渡したあとに
お待ちかねの曳山が回される。
その曳山がこちらだ!
↑これも実際展示してあるものを撮ったのだが、
人形部分が見やすいように明るさ調整していたら
背景がうまいこと消えてしまった。
ちなみに、御神体というか人形は
普段はこのように曳山から降りているらしい。
周りの雰囲気からすると、どこかの神社の中なんだろうか。
それとも、専用の居室(?)があるのか?
しかし、これだけ絢爛な文化を生み出した養蚕も
世界大戦後急速に衰えてしまった。
そして、現在八尾には養蚕農家は一軒もないのだそうだ。
しかし、その素晴らしさ故 八尾の祭りは注目度が高く
曳山・おわらともに全国から見に来る人が大勢いる。
ぜひ、その祭りの美しさをカメラに収めるだけでなく
その美しい祭りを支えてきた養蚕業や
その養蚕から派生した民間信仰にも興味を持って戴きたいところ。
*おまけ*
曳山の各部分の名称が
曳山展示館の壁に張ってあった。
自分の役に立つかもと思って一応撮っておいたやつ。
ちなみに、昼は瓔珞と彫刻が美しいけれど
夜はそれを外して提灯が付きますよー。
昼だけ見て満足するなかれ。