「久々に復活したと思ったら神社じゃなくて映画の話かよ!」
…と言われそうだが、5年前に「君の名は。」の話をした時そうであったように今回もほぼ神様や信仰のことしか考えていないので許していただきたい。(誰に許しを乞うているんだ一体)
「君の名は。」の記事はこちら↓
では、早速本題に移るけれどあくまでも「雑感」であり、ちゃんと裏を取った考察ではないのでご了承ください。では、①の今回は、主人公の名前の話。
さきの「君の名は。」に登場するヒロイン・宮水三葉(みやみず みつは)の名前は、水の女神であるミヅハノメから来ているのではないかと考えたわけだ。(今思えばクラミツハなども“ミツハ”が付く水の神なので候補にすべきだったか)
今回のヒロイン・岩戸鈴芽(いわと すずめ)はどうなのだろうか。と、考えたとき目を引くのは「岩戸」という姓だった。個人的には、もはや弟・スサノヲの蛮行にキレたアマテラスが引きこもった天岩戸しか思い浮かばない。
日本神話よく分からない!自分、置いて行かれてる!という人も居ると思うので簡単に言うと、アマテラスという太陽の女神が岩戸に閉じこもったことで世が闇に包まれ、困った神々はどうにか天岩戸を開かせ彼女に出てきてもらおうと画策する。
いろいろな案が出た結果、アメノウズメという女神が露出の多い格好で力強く踊り神々は大いに喜んだ。その楽しそうな声を聞いて「え?アタシ隠れちゃったのに超楽しそうじゃん!なんで?」と気になったアマテラスが戸を開けるというストーリー。
ここで天岩戸に関連深い女神に照準を絞るのは早計かもしれないが、1回見ただけの現時点では他にめぼしい手掛かりがない。と、言うことで次に「すずめ」という名前のほうに目を向ける。
可愛らしい名前だ。しかし、日本神話に雀なんて登場したか?鳥と言えば、セキレイ・ニワトリ・カラス・ハクチョウ・ワシ・キジくらいではなかったか。では鳥でないスズメとは何なのか。
そう考えたときに藁にもすがる思いで掴みたいのが、先ほどの「天岩戸」というヒント。妖艶な舞踏で神々を笑わせ天岩戸を開いたアメノウズメの「ウズメ」がすずめに変化したのではないか?
「ウズメとスズメじゃ違うだろう、こじつけだ!」と言われそうだが…埼玉県熊谷市の柿沼には雀神社という社が鎮座する。この神社の御祭神はアメノウズメであり「祭神の名前が転じて雀となった」としている。
しかし、ウズメ→スズメの転訛が1件しか見つからないのでは弱いのではないか…ということで、保険として考えておきたいのが同じくスズメに転訛されやすい「鎮め」という言葉。
洪水を鎮める・疫病を鎮めるといった願いから「雀神社」と名付けられた神社は数件あるようだし、すずめが“後ろ戸”を閉めて地震を鎮めているという劇中の行動にもなかなかマッチしているはずだ。
と、個人的に納得できる説にたどり着いたものの友人Aから「来場者特典の新海誠本にすずめの名前はアメノウズメからインスピレーション受けたって書いてあったわ」という爆弾を投げつけられたのだった。最終奥義「作者が言ってる」を食らったら、そりゃ負けるわ!
ともあれ、多くの神話好きは「すずめちゃんがアメノウズメとリンクしているというなら、戸締りでなく戸開きではないか?アメノウズメは扉を“開く”女神だろう?」という疑問を感じるはずだ。
このあたりは物語の終盤をネタバレしてしまいかねないのでぼやかすが…おそらく映画を見てみれば彼女の行為中で最も重要度が高いのは「閉める」のではなく「開ける」ことだったのかもしれないというのは分かる。ので、ぜひ実際に見てみていただきたい。
余談だが、鈴芽(すずめ)の母親の名前は椿芽(つばめ)という。そして、アメノウズメの配偶者とされる猿田彦を祀る神社の総本宮が三重県鈴鹿市の椿大神社。それゆえ椿からは夫とともに祀られるアメノウズメも連想されるが、母親の名前に椿の文字が付くのは偶然だろうか。