『福祉のための民俗学』
- 作者: 岩崎竹彦編
- 出版社/メーカー: 慶友社
- 発売日: 2008/02/01
- メディア: 単行本
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今日の読書は大学での専攻分野(福祉)と民俗学をまたぐ。
六車由美さんの『驚きの介護民俗学』が平積みレベルに流行った(?)ので、
少しは世間の目がこの分野に向いたら嬉しいなとおもったり。
⚫︎民俗学の「学問救世」を実現する福祉
・柳田國男は、単に机上で理論のみを編む「高尚な」学問でなく
実用的な研究により学問が世に役立つことを目指した。
・民俗学関係者や博物館は
医療・福祉分野における民俗&民具の有効性を把握し
福祉との協働体制を作るべき。
→それが柳田の主張した「学問救世」にも繋がるはず。
⚫︎福祉のソフト面と民具・伝承
・施設の整備などが進んだ今、
福祉は「ハード」から「ソフト」への転換を迫られている。
(そうした心の福祉の一方法が回想法である)
・回想法は米・精神科医ロバート・バトラーが提唱したもので
事実を思い出すと同時に感情を再確認し
それを共有するものである。
・回想法の過程と民俗学の対象を照らした時に、
こうした事実確認の位置を占めるのが民間伝承である。
・民間伝承は一回期性流行変化をする表層文化と異なり
“名もなき民”の無意識によって作られた基層文化である。
・昔話をすることを「昔を語る」と言うが、
カタルとは元々「参加」を意味する言葉である。
☆聴く者として参加することも、場を共有することであり、
集団につられて歌うのもそれに似た部分があるのではないか。
☆高齢者の回想はできるかぎり高齢者だけでなく、
子供を迎えるべきだし子どもの集う場で行われるべきである。
⚫︎民俗学と回想法の協働例
・昭和日常博物館では試験的に
「ナツカシイ」によるヒーリング・心理刺激が行われた。
・飛騨・山樵館では回想法などに使用する
「レンタル民具パック」が実施されている。
・熊本博物館の回想法事業
参考:「老いと看取りの社会史」法政大学出版
「社会学から見た記憶」モーリス・アルヴァックス
児童福祉法では根拠を述べることもなく児童を「愛され育まれる対象」としているけれど、
老人福祉法では第二条「基本的理念」において高齢者を敬愛すべき理由として「長年にわたり社会の進展に寄与してきたこと」が挙げられている。
また、平成二年の改正で「豊富な知識と経験を持つこと」が加えられた。
それが無ければ敬愛の対象にならない云々ということでなく、
今までにその人たちの組み上げてきたことの上に今の生活がある。
その組み上げた結果として今あるものだけ 最先端だけを駆使するのでなく、
その過程の存在を忘れず掘り起こし続けるところで出来ることがある。
という意味に捉えたい。