とまのす

ちいさくゆっくり、民俗さんぽ

上新田稲荷獅子舞

群馬県佐波郡玉村町上新田にある稲荷神社。

ここで、先日書いた「すみつけ祭り」とほぼ同時に

稲荷神社獅子舞が行われました。

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獅子舞と言われて一番イメージしやすいのは

赤い獅子頭に大きな布をかぶり

獅子の中に人が2人入る「伎楽系(神楽系)」でしょうか。

あの、よく年賀状に書いてあるやつです。

 

ですが、今回のような獅子舞は「風流系」の仲間。

1人で1匹の獅子を演じ、腹部に括った太鼓を打って舞います。

秋田のささらおどりに登場する風流系の獅子

 

写真でも黒い獅子に挟まれて赤い獅子が歩いていますが、

風流系には雄獅子2匹・雌獅子1匹という組み合わせの

「三匹獅子舞」というのがあります。

当日も、雄獅子が雌獅子を奪い合う様子を描いた

「女獅子隠し」という演目が舞われました。

 

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獅子3匹を率いる稚児(カンカチ)について。

 

今回の獅子舞では、穀物神の使いであるオトウカさん

(↓「お稲荷」を音読みしたもの。狐の面を付ける)

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に続いて↓カンカチと呼ばれる稚児が登場します。

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カン、カチ、と音のなる打楽器で拍子をとることから

この役をカンカチと呼ぶ、と言われています。

 

幼い命はまだこの世にしっかりと居ついていない。

だから、7つくらいまでの子供はまだ神の領域にある。

 

と、昔は言われたそうです。

そのため、神様が降りやすいとされた稚児は

日本各地の色々なお祭りに登場します。

そうした依代としての役割を担うのか

 

それとも保存会に入った年少者が

最初に担う役と決まっているのか。

しかし、地域が違えば大人のカンカチもいる。

どれが元に近い姿なんでしょうか?

 

そして、もう1つ「カンカチ」と言われて私が思い出すもの。

それは以前に聞いた「山の神はカンカチと言われてる」という話。

カンカチとは体に不具があるという意味らしいという話でした。

*2019/4追記*
山の神とカンカチの話について、
それと同様の話が柳田国男の本に載っているが
どうやらそれは解釈違いだったというコトも書かれている。
とご指摘を頂いた。

私に話をしてくれた方が
日常的な言い伝えのことを話してくれたか
文献で知ったことを教えてくれたか

というのは定かではないのだが、
指摘を受けて柳田国男の文庫の山を掘り起こすと
確かに
「山の神はカンカチであるから外聞が悪い 」
と書いた著者が
カンカチとは眇目(片目、斜視)のことだろうと解したが
それは誤りであって火傷の痕のことだそうだと書いていた。

柳田国男「一つ目小僧その他」(1954),角川書店

 

いずれにせよ、

カンカチが山の神に関係のある言葉だ

というのは気になります。

 

この獅子舞は春祭りとして

氏子安泰・五穀豊穣などを願うもの。

 

“田の作物を見守っていてくださるのは

 里に下りて「田の神」となった山神さまだ。”

 

とも言われるので

豊穣祈願の場に山神様がいても不自然ではないハズ!

 

群馬のほかのお祭りでも

山岳信仰と関連深い天狗がカンカチを務めることもありますし、

カンカチと山神さまの関係は深そう。

と思った上新田の獅子舞でした

(・ω・)ノ