とまのす

ちいさくゆっくり、民俗さんぽ

ささらおどり

秋田・角館で武家屋敷散策をした後、

偶然「ささら踊り」が見られました。

 

コチラのささら踊りというのは

ささらを持った道化役と3匹の獅子が踊るもので

そのむかし、佐竹の殿様が茨城から秋田に向かう際

ササラを鳴らす者を行列の先頭に立たせ

厄や悪霊を払わせたというのですが。

そのササラを振る姿と、

秋田にもともとあった獅子踊りが合わさって

「ささら踊り」が出来上がったとか。

あくまで、一説であって正解は分からないようですが…

(参考:秋田民俗芸能アーカイブス「芸能詳細 広久内ささら(ひろくないささら)」,
http://www.akita-minzoku-geino.jp/archives/5426

  

今回のささら踊りでは、

まずハリボテのような仮面をかぶった人

↓が列を率いてやってきます。

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(メモリの関係で写真が撮れなかった…)

ヘタな絵ですが、だいたいあってると思います

(^_^;) 

 

これは「オーセイ役」と呼ばれる人で、

まず獅子たちが踊る場を清めてくれます。

 

 

次は道化役「ザッザカ」。

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ささらを鳴らしながら踊ったり、

写真のように扇を使って軽妙な踊りを披露してくれます。

 

そしてこちらが、獅子。

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一般的にイメージされる獅子たちより

ずいぶん角が大きいですよね。

 

はっきりと起源は分かっていませんが、

もともと狩猟生活をしていた日本で

 

・獲物であったシカやイノシシの供養

・山の恵みの神として畏敬の念を示す

 

などの理由から鹿を模して踊ったのが始まり!

…ともいわれているそうです。

鹿っぽい角ではないけれど。

 

ちなみに、お正月によく見るような

赤い獅子頭に唐草模様の布をかぶっている獅子。

あれは「伎楽系(or神楽系)」と呼ばれ、

中国から伝わり西日本を中心に広まったと言われています。

 

伎楽系獅子舞の囃子方は、

舞手と別にお囃子をしています。

が、風流系では写真のように

腰に括った太鼓を自ら打って舞います。

 

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さて、突然ですが

話をオーセイ役に戻します。

 

この、ザッザカの面に対して

「いかにもハリボテ」という被り物。

※下手だけどホントにあんな感じ

 

東長野ささらにも、

ほとんど同じ姿のものが登場するのです。

(参考:高橋清一 編「仙北の孟蘭盆をいろどる東長野ささら」)

 

そして、ふと私が気になったのは

さらにもっとずっと南・八重山諸島です。

 

独特の祭りが多く残る八重山

旧盆に行われる祭りの仮装行列(ミチジュネー)に

「ミルク」と呼ばれる神様が登場します。

 

この神様は年に一度だけ海のかなたから来て

五穀の種を人々に与えると伝えられています。

※沖縄・久高島などの伝承では、

 海のかなたから五穀を授かる話がチラホラ見られる。

 

ミルクは女性だとも言われていますが、

その顔はどう見てもオッサン。

しかも髪の毛がない。

完全に布袋様みたいな感じなんです。

 

しかも、このミルクも行列の先頭に立ち

右手に扇を持っている。

さらに、沖縄でも

行事で神に扮するための仮面は木製が多いけれど

ミルクの顔はオーセイと似たクオリティで色白。

 

なんだか共通点が多い…

 

ミルクは弥勒が訛ったものと言われているし、

エイサーも東北の念仏踊りが伝わったモノと聞いたので

ミルクも本州から伝わったものでは…

と思っていたのですが

 「海の果てから神が来訪し五穀の種を人に与える」

という信仰はミクロネシアに多く、

弥勒菩薩=布袋様という信仰は

インドシナや中国から始まったのだとか。

さらに、八重山のミルク面にそっくりなお面が

ベトナムのお祭りに登場するという話も耳にしました。

 

もしかして、逆に南から

(しかももはや国境を越えてアジアから)

北のほうへ上がってきたの?

 

こんがらかってきましたね。

オーセイ・ミルクのこと、

もっとちゃんと勉強します!

(′・ω・)ゞ

*参考文献*
琉球大学附属図書館 沖縄資料室 デジタル資料「琉球国由来記集」写本
小谷野洋子「沖縄におけるミルクとシシの考察」(2007),「民俗文化研究 第8号」
笠原政治「台湾発のオナリ神研究」(2009),「民俗文化研究 第10号」民俗文化研究所編
柳田国男海上の道」(1978),岩波書店