とまのす

ちいさくゆっくり、民俗さんぽ

「宮型」に逢えなくなる日が来る!?

昨日、私が出かけている間に
両親はテレビを見ていたらしく。
(大体いつもそうだが)

家に帰るなり、
「あんたの世代は豪華な霊柩車なんてもう無かった?」
と訊かれた。豪華とはいったい。

いろいろ考えてみるが、そういえば最近洋型が多いかも。
豪華なやつとは宮型のことかもしれない。

洋型↓

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※株式会社TRGさんのホームページより拝借
 ここの「MITIBIKIシリーズ」のデモ映像、
 なんか広いし居心地のよさそうな霊柩車だった。

宮型クラウン↓

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※東洋企画さんのホームページより拝借

「神輿みたいなやつなら、高校くらいまではよく走ってたよ」
と言うとあら、まだあったのねぇ。と言っていた。

私は幼稚園の頃からあれが好きだった。
単純に形がスゲー!というのもあったが、
祖父の菩提寺で読んでしまった「地獄のはなし」
的な絵本のせいで幼稚園時代の管理人は
日々地獄におびえながら過ごしていた(ノД`)・゜・。

それを救ったのが宮型霊柩車である!
あれを見たとき、
「なんだ、人は死んだらかみさまになるのか」
と、仏教神道も何もわからないがそう思った。
そしてそれから地獄に怯えなくなったのである。
やったね(∩´∀`)∩

そんな宮型霊柩車が、
最近人気が無いと最初に知ったのは

増補新版 霊柩車の誕生 (朝日文庫)

増補新版 霊柩車の誕生 (朝日文庫)

 

この本である。
奇しくも、私が高校時代に読んだ
(私の中では初めて霊柩車について詳しく知った)
その本の増補版だった。

懐かしいので手に取ってみただけだったが、
増補版で何が変わったかというと。
章が増えていて、その最終章こそ
「消えゆく宮型」というタイトル。

この「霊柩車の誕生」の著者・井上章一さんが
銭湯研究の第一人者・町田忍さんと一緒に書いたのが
こちら↓

The霊柩車―日本人の創造力が生んだ傑作 (ノン・ライブ)
 

なのだが、では何故なくなってきてしまったかというと、
この町田忍さんへのインタビュー記事によれば
単純に「見るのがイヤ」という苦情が来るんだそうだ。

そしてその背景には、
田んぼや畑が減ったことも関係しているという。
つまり、いままで葬儀施設というのは大体
民家から離れた田んぼの真ん中にあったのだが、
農家離れが進むとともに田んぼの土地を
住宅を建てたい人に売るということが起きてきた。
すると、葬儀場や火葬場の付近にも人が住むことになる。
そこに霊柩車が乗り付けてくると嫌なんだそうだ…
だからなるべく霊柩車と分からない形がいいのだという。


そうでなくとも、
火葬場のそばに住む人は煙突から煙が上がるだけで
あの下で人が焼かれているのだ…
と嫌な気分になるそうだ。

嫌だという人に嫌がるなと強要はできないが、
国によっては高貴な人にしか許されない火葬を
今や国内ほとんどの地域でどんな死に方をしても
してもらえる国が日本なのだ。
そしてそれが
何より人が天に早く届きそうな方法でもある。

日本人は、不自然なくらい死から離れすぎた。
と、管理人は思っている。

私も学生の頃は死ぬのが怖かった人だが、
現在は病院で働いていて
御遺体相手にいろいろすることも多いので
なんというか
その恐怖というモノはすごく薄れた気がする。

慣れとかではなく、
死んだらみんながどのようにしてくれるか。
そして人は死ぬといかに物理的な
というか「モノ」的な雰囲気になってしまうか。
そういうのが分かったから、
死ぬということを具体的に自分の中で整理できた。

だから、現在過剰に死と生活が遮断された結果
これから今以上に「何も死を感じたくない」。
という人が増えるのだろうなぁと思う。

*病院と御遺体*
せっかく病院で働いているので、
今やあまり見なくなってしまったであろう
「御臨終後の色々」
を少しだけ紹介したい。

おそらくだが、
死にあまり触れたくない人は
この記事をここまで読み進めていない気がするので
遠慮なく死の話をしているわけだが…。
そうゆうつもりでなくここにきてしまった人には
本当に申し訳ない(;´・ω・)

どうしてくれんのよ!
あたしは霊柩車にちょっと興味あっただけよ!
という方は、ここは読み飛ばして
下の外国で活躍する宮型霊柩車などのお話をどうぞ
m(. .)mペコ。

まず、昔は多くの人がおうちでなくなって
おうちでいろいろしてそれから葬儀場に行ったり
そんな感じだったと思うが、
今は一瞬たりともおうちにご遺体を置くことはない!
というやり方もあって結構そうする人が多い。

まず、患者さんが亡くなると
看護師さんは先生に報告します。
とにかく死亡診断書を早く書いてもらう!
※在宅医療の場合など先生がそばにいない場合は、
 24時間以内に診察をしていて
 かつその死亡原因が診療中の病気と無関係でない場合
 あらためて診察をしなくても先生は死亡診断書を出して良い。

先生が早くそれを出してくれないことには、
葬儀社はもちろん家族もご遺体には触れることができない!
ちなみに、搬送などをしないまでも もし触った場合
死体遺棄・損壊罪容疑として警察にお呼ばれすることも。
( ゚Д゚)ナント…
そして看護師はさまざまな作業をするわけだが、
ここでは医療行為でなく葬儀習俗に関するところだけ。
このへんは、自宅でなくなった場合などは
ご家族でやる部分だったのだが、
最近は葬儀会社か病院でやることが多い。

布団や着物の合わせ、枕など
亡くなるといろいろなものを普段とは逆に行うが。
全身をお湯で綺麗にする「湯灌」も「さかさ湯」で作る。
つまり、水を汲んだ後にお湯をくわえて作るということだ。
※まぁ病院だと湯ではなくアルコールで拭く場合が多い。
単によごれを落とすというだけでなく、
これから神様の所に行くので体を清める意味もある。

そして、末期の水というのは
お釈迦様が入滅される直前、
弟子のアナンに水がほしいと頼んだことに由来する。
さすがアーユルヴェーダの国というか、
お釈迦様の入滅はいろいろ医療的にも根拠があることが多く
「右を下にした側臥位(涅槃像の姿勢)は
 消化器症状のある人にとって最も安楽で安全な姿勢」
というのもその1つであるが
「亡くなる前に水を求めた」というのも、
「亡くなる前というのは下顎呼吸になり
 口呼吸のためお釈迦さまは喉の乾きを感じた」
と考えることができる。

ちなみに、臨終が近いと飲水できる体調ではないことが多いため
実際ゴクゴク飲ませるわけでなく唇を湿らす程度に水をあげる。
それが亡くなった後のしきたりとして残っているのだ。

ほんとうは「しきみ」の葉に水を含ませ
唇を濡らしてあげるのだが
今どき しきみなんてどこにあるんだ!
ということで現在はまだ割っていない割りばしに
脱脂綿を巻いたもので代用することが多い。

私の勤務する病院の場合、この脱脂綿棒や白布などの一式は
葬儀会社が無料でよく病院に持ってきてくれる。
(栄養ドリンクと一緒に…)
それを保管しておいて、そういう時に使う。

ちなみに北枕は、決して悪いことではない。
お釈迦さまは死にそうだから北向に寝たのでなく
インドでは身分ある人などは北向きだったそうだ。
ちなみに涅槃像などは右を下にして横に寝ているが、
あれは理にかなった最も安楽な姿勢とされている。
(あんなにピンとまっすぐじゃ楽じゃないが)

今どき流石に
布団の上に刀を置いたりはしなくなったようだが
うちの祖父の時は置いてあった。
これは遺体そのものというよりはその中にいる魂を
寄ってきた鬼などから守るそうだ。
(結構霊は金属を嫌うという。五行説の影響か)
そして色々やって、
今はそのまま葬儀会社が連れて行ってくれて
葬儀の日まで葬儀会社で預かってくれたりもする。
そこはご家族の希望に沿うのだが。

ちょっとベテランの看護師さんに聞くと、
若いころは夜間に来てくれる葬儀会社が無かったり
または自宅に引き取るという人がいたりで
霊安室をよく使ったそうだ。
今も使わないことはないが、
大体病室からそのまま葬儀会社へGO!
がほとんど。
守り刀が無くても寄ってくるスキが無いか。

私の知っているベテラン看護師さんは、
初の夜勤で患者さんが亡くなり
長いコト霊安室で線香の番をさせられた…
という思い出があるそうだ(;´∀`)

お寺で供える線香も
霊安室の線香も意味は同じで、
もう普通のお食事を食べない方へ
「香り」を食べ物としてお供えするのだ。

まぁそんな感じで、
病院の仕事はここまでなのだが
ここからは葬儀会社が死亡診断書と死亡届を持って
火葬の許可をもらいに行ってくれたりと
いろいろする。

ちなみに、日本では法律で
死亡確認後24時間以上たたないと火葬できない。

そして色々はしょるけども、
霊柩車に乗るのだ!



*アジアと宮型霊柩車*
日本で残念ながら人気薄になってしまった宮型。
だが、意外なことに東南アジアなどで人気!
という噂を聞いたり。
管理人もそんなに手広くは分からないので
さいきん聞いたことあるものだけ。

まずモンゴル。
モンゴルに宮型の存在が伝わったのは
お相撲さんによるところが多いらしい。
白鳳や朝青龍など
モンゴル出身の力士は多いが、
彼らが里帰りした時に
「日本の人はなくなるとすごい車に乗る!」
という話をしたことで知名度が上がり、
宮型の中古を購入する葬儀会社などもあるそうだ。

両親が見た番組の録画を見たが、
亡くなった人を乗せるというよりかは
布教に使えるみたいなニュアンスのことをいっていた。
実際に霊柩車を使ったお坊さんの話では
「走る寺だ!」と言った人までいたらしい。

そしてミャンマー
みなさん「アジアのノーベル賞」といわれる
マグサイサイ賞をご存じだろうか?
フィリピンにある財団が毎年
地域に貢献した人を選んで贈るのだが。
有名どころではマザーテレサダライ・ラマ
日本の有名人(?)の中では
平山郁夫緒方貞子黒澤明などが受賞している。
※有名どころを挙げたが、もうちょっと小規模に
 自然農法や病院などで受賞している人も居る。

その賞を去年受賞したミャンマーの俳優さんは
貧しい人に無料で葬儀を提供する事業を行い
この賞を受賞した。
その儀業を紹介した写真に宮型霊柩車が!

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まぁもともと木のたくさんある
温暖湿潤気候・日本の神様が入る場所なので…
なじんでると言えばなじんでるな…緑に…

そして台湾では、
中国から入ってきた「中式」霊柩車と
日本の宮型「日式」は使い分けているとか。
中国のモノはトラックを塗りなおした感じのモノや
黄色くて背の低い護送車(?)みたいなモノなど
調べてみるといろいろな色や形があるけれど、
結構遊覧バスみたいに中が見えているものが多かったり。
日本でもまれに後部のガラスは全然黒塗りでなく
中が見えそうなものもあるけれど。

仏教徒は中式が多く
キリスト教徒は日式(=宮型)が多いのだそうだ…
なんでやねん( ゚Д゚)!

洋式の中古は宮型より高いんだろうか。
それとも、
台湾の人にとっては中国は仏教色強いけれど
日本は外国枠というか異文化枠ということ?
教会に宮型霊柩車が停まる光景…
想像しただけで違和感なのだが台湾的には
宮型がどうゆうイメージで使われるのか、
これは理由を知りたいところ。

というところで今回はそろそろ終わりにしますが、
宮型はメンテにも大工さんが必要だし
いろいろ手がかかるので最近は
プラモデルのような素材で作られたりもするそうだ。

アジアで宮型霊柩車の中古車が
どれくらいの相場で取引されているかわからないが…
国内では中古でも500万以上はするらしい。

しかし、芸能人の方で宮型霊柩車を所有していたり
まさかの「霊柩痛車」の写真がネットに結構あったり…
案外葬儀目的以外で持っている人は多いのだ。

これが霊柩車が日本で生き残る道か?
確かに葬儀に限定しなければ
死のイメージと離れて単に宗教的なもの
もしくは日本的なものとして生き残れるかも…
(;´・ω・)
「あれは昔は亡くなった人しか乗れなかったのよ」
なんて時代が来るのか!?おそろしー!

*追記*
余談ですがフィリピンの霊柩車かわいいです
これは比較的日本の宮型に近いけれど

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白が基調のモノも多く
レトロバスみたいのや馬車のまであるそうな
(*'ω'*)