とまのす

ちいさくゆっくり、民俗さんぽ

吉祥寺の春駒まつり(*'▽')

前回記事吉祥寺の仏像ズ。 - とまのす

本堂に行き着くまでが長すぎて、
本堂手前で終わってしまったので。
今回こそは!

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春駒は、養蚕と関連深いお祭り。
上毛かるたに「繭と生糸は日本一」とうたうだけあり、
群馬は繭関係の神社やお祭りが結構あったり。

これは群馬特有の民俗芸能ではなく、
日本全国に「春駒」「春駒踊り」などという名称の芸能がある。
養蚕にかかわらず、馬のかしらなどを持って新年を寿ぐ芸能の総称で、
沖縄の「じゅり馬」などのように芸妓や遊女が舞ったものもある。
なので、もともと旅芸人が行った踊りを村人が模した群馬のものは
全国的には地味なほうなのかもしれない。

ただ、群馬の春駒は「奇祭」と称されることがある。
管理人は奇祭と聞くと
チ〇コ祭りの類、みたいなイメージをしてしまうけど、
そうではなく「女装して踊りを奉納する祭」なのだ!
この方々↓全員男性!( *´艸`)

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日付は毎年2/11と決まっている。
これは、旧暦の2/11に穀物神・ウカノミタマが
伊奈利山に降り立ったから、らしい。
※11日というよりは、2月の初午の日とも言われる。
お蚕様はもちろん穀物ではないのだが、
お蚕様とお稲荷様にはいろんな関係がある。

*お蚕様とお稲荷さん*
ではどんな関係があるのか?というと…
キツネは、か弱いお蚕様を守ってくれるのだ!
守護神とかそういう精神的な話をしているわけではなく、
せっかく作った繭を食い破るネズミから という話。

虫嫌いな人はあまり想像できないかもしれないが、
芋虫というやつは密閉されたところで飼ってみると
かなり蒸れる。結露するほど蒸れる!
( ゚Д゚)!
それでなくとも、
お蚕様というのは非常に弱くて
温度や湿度に敏感なナイーブ芋虫である。

なので、ネズミが怖いからと
密閉した場所になど置いておけず、
解決法としてはネズミ駆除しか無かった。
ヘビやキツネ・ネコなどのねずみハンターが
非常にありがたがられたのは言うまでもない。

その
①ハンター・キツネを眷属とする
 ウカノミタマの祭日が初午の日であった!
というところと、

以前のオシラサマの話で書いたように
⓶蚕は馬と正反対の気を持つ動物なので
 午星(アンタレス)が見えない初午の頃が
 お蚕様にとって良い時である!

そして単純に
③お蚕様の背中の模様が馬蹄に見える

という3つの理由から蚕は馬とも関係深い。

*吉祥寺と金甲稲荷*
さて、金甲稲荷は吉祥寺を開いた際に
京都・伏見稲荷からお招きしたお稲荷様。
お寺とこの土地の鎮守を務めている。

今回の養蚕の成功を祈願するこの春駒も、
お稲荷様はお蚕様の守り神ということで
吉祥寺の裏山にあるという金甲稲荷に奉納されるもの。
ただ、人が集まれるスペース的な問題からか
奉納踊りは稲荷神社ではなく吉祥寺本堂で行われる。


昼の奉納踊りは、大体12時ごろから。
春駒は門付芸(家々をまわって行う芸能)であり、
朝から夕方まで二手に分かれて地区内の家をまわっている。
昼休憩もかねて一旦境内に戻ってくる感じなんだろうか。
仏像ズを見て、12時ギリギリに本堂に入ると
既に一眼レフ片手におじいちゃんおばあちゃんが大勢!
そしてなぜか本堂のいたるところに、
山積みの蒸しきんつばが「どうぞ」とばかりに。

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踊りが始まる前に、少し本堂の中を見てみる。

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欄間の存在感がすごい。
お釈迦様の人生の一場面なのか、羅漢とかなのか。
ホームページには「禅の精神と威厳を十分に示しています」
と書いてあるのみ…お寺の人に聞けばよかった…。

そして…
お寺の中にお狐様が二匹向かい合っている
という何とも珍しい光景が!
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稲荷神社は雪で通れず見れなかったけれど、
貴重なものを見られた気がする(*'▽')

今回の春駒は
「おっとう・おっかあ」各1「娘」2人
の4人家族の旅芸人という設定である。
奉納踊りでは それが2組いるので
おっかあ2人が太鼓を叩き、娘4人が踊る
という感じになる。

もともとは実際に旅芸人が行っていた踊りだそうだが、
病気か何かの事情で芸人一家が来られなくなった年から
蚕が非常に不作だったため村人が代わりに行うようになった。
という経緯で女装なんだそうだ。
(しかし村人にだって女性はいただろうに…)

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ともあれ娘さんたち、楽しそうである(*'▽')
おっとうは何をしているのかというと、
家々で必ず酒をふるまわれるため既に酔っている!
みにきた奥様やお子様たちに絡んでいる!
Σ(・ω・ノ)ノ!
まぁ、神様役の男性たちが泥酔しながら
道に寝ころびつつ家をまわる祭りもあるんだから…
ぜんぜんアリか(笑)

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朝の奉納踊りはお稲荷様に向かって
そして昼は皆さん=お寺の庭側に向かって踊るらしい。
位置取り失敗。娘さん(♂)のお尻しか拝めず。

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おっかあが平太鼓のバチに使っているのは
養蚕のお祭りだけあって桑の枝。(お蚕様は桑が主食)
家々をまわる際にはこれを一軒一軒のうちに置いてきて、
その家では一年間、その枝を神棚に上げておくそうだ。

おっとうが担いでいる袋にたくさん枝が入っていて、
声をかけるとくれる。
多くの枝には金紙みたいのが結わえてあるが、
「ついてない(*´з`)」と言ったら娘さんが
持っていた駒の布についていた金紙を取ってつけてくれた。

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そして、
これが春駒の娘さんアイテム、馬の頭!

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奉納が終わってから本堂内を見ていると、
このお寺を開いた中巌円月禅師の座像が。
禅師にも蒸しきんつばがお供えしてある…
( *´艸`)

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…なかなか眼光鋭い。
白目っぽいから怖いんだろうか…

円月禅師は鎌倉時代の有名な禅僧。
若いころには元へ仏教留学にも行っている。
そして帰ってきてからも昇進(?)。
このお寺を開いた後も、
あの円覚寺や本山である建長寺の寺持となった!
とゆうすごい人である。

この吉祥寺も、
未開の地グンマーにあるからと馬鹿にするなかれ。
臨済宗建長寺派の寺院で最も北にあるということで、
建長寺北の門」という2つ名を持っているのだ。

また暖かくなったら
滝とか釈迦三尊像とかちゃんと見に来よう~。
(=゚ω゚)ノ!