とまのす

ちいさくゆっくり、民俗さんぽ

前橋の長壁(おさかべ)様。

前橋の、と書いたのは

もともとこの「おさかべさま」が

姫路城の天守閣にいた神様だから。

 

転勤続きの松平氏が姫路から前橋城に移るときに

一緒にお引越ししてきたらしい。

 

ちなみに、姫路城のほうでは

刑部と書いておさかべ だったりする。

 

神様とは書いたけれど

姫路城にいたころは人間嫌いのばけもので

祟る力も強いと恐れられていた。

 

その正体は姫路城のある山の女神さまだとか

昔の親王様の不義の子だとか

天皇に寵愛されていた女性の霊だとか

年を経た狐だとか

蛇で、猪苗代城の亀姫の姉妹だとか

※姫路の昔の言葉で蛇のことをサカフという

  ↓

 サカフ姫→サカベ姫

 まぁいろんな説があるわけだけど

全国的にメジャーな狐だという噂が有力になった。

 

だから長壁稲荷と呼ばれたり

境内にたくさんの狐がおかれているのかも?

 

さて。

群馬県前橋市大手町一丁目。

この長壁神社、かなり地味な場所にある。

実は今回、行こうと思って行ったのではなく

住宅地をちょろちょろしていたら

神社の文字を見つけたので入ってみただけ。

 

しかも境内が民家に囲まれている…

参道(だとおもう)に入ると民家の犬が

「うちの庭に侵入者が!」

という勢いで吠えてくる。

 

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奥まった拝殿(兼本殿?)に行くと、

周りはイチョウの木だ鬱蒼としているため

足元は銀杏爆弾だらけ!

 

狛犬の間を進んで、

踏まないように気を付けて中を覗くと。

 

中には長壁姫やお稲荷様に関するものではなく

中学生くらいの大きさはある人形と写真。

そして「木花咲耶姫」と書いたのぼり旗。

 

後で調べたら、

現在では長壁稲荷さんは前橋東照宮に引っ越して

ここは跡地のような場所らしい。

でも取り壊さずに住民の方々が管理していると書かれていた。

今はサクヤビメが住んでるのね。

 

木花咲耶姫(このはなのさくやひめ)は

すっごく美人な女神さまでニニギの奥さん。

いろんな伝説を残したけれど

燃え盛る小屋の中で無事に子供を出産したという話から

安産・妊娠に関するお願いを聞いてくれるとされている。

 

そして、その本殿の裏には…

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長壁稲荷さんがいた名残なのかたくさんのお稲荷様と

ひっそりと二十三夜様。

※二十三夜様は十五夜と同じ月待信仰のひとつ。

 いまは十五夜と十三夜しか残っていない地方が多いですが…

 月に関する信仰なのでやはり女性だけで講をしたりしたそうです。

 

女神色の濃い神社だった。

そして、すごい量の蚊に襲われた…。

 

すごく余談だけれど、私が小学校のころ

利根川が氾濫して50台以上の車が流されたことがあった。

前橋東照宮のHPのよれば、

このとき某企業が長壁神社の土地を買って

まさに開発しようとしたとこだったらしい。

 

まさかの、長壁様のタタリ健在。

しかも東照宮に引っ越した後でもまだ

ちゃんとこの土地を守ろうとしてくれている!

 

後でまたちょっと氾濫の話は出てくるけれど、

そうゆうとこ見ると

やっぱり長壁さんは狐ではなく

水をつかさどる蛇神さまなのかもなぁ。なんて。

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 群馬県前橋市大手町三丁目

前橋東照宮に引っ越しました≡3

とのことなので

ついでに足を延ばして長壁稲荷お宅訪問。

 

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こちらの本殿にいらっしゃるそうで。

だいぶおうちが大きくなったみたい。

 

ここでは、長壁さんのほか

さっきの長壁神社にいたコノハナサクヤビメ

徳川家康公と菅原道真公がシェアハウス中。

 

もとはといえば

利根川の氾濫で前橋城(いまの県庁の位置)が

本丸の一部を含め大打撃。

これはたまらんと城主が川越に移ることにした時の事。

 

お城の鬼門である未申を守っていた長壁さんは

「姫路から一緒に来たんだから、川越に行くときもいっしょだよね?」

と城主の夢枕に立つのだけど

「おまえ、氾濫から城守れなかったじゃん!居残り!」

と断られて城工事のため移動させられてしまったらしい。

この後いろんな人の夢枕に立ってお願いして回った

というエピソードを知った瞬間から

わたしビジョンではかなりカワイイ神様になっている。

 

ただ、一説には逆に

「姫路では天守閣にいた私に未申(裏鬼門)を守らせる?」

「しかも城の敷地外ですって? あんた、ばかぁ!?」

ということで怒って利根川を氾濫させて城を壊した。

みたいな話もあってプライドは相当高い模様。

 

松平氏が川越に移った後も

長壁さんのお願いを断った城主は病気になり

一方で長壁さんの残った前橋は絹商売で大繁盛したとか

かなり強力なツンデレ(?)である。

 

引っ越した後も、前橋空襲の際には

焼夷弾の雨を浴びて炎上しそうになった東照宮

「長壁大神」の提灯を持った男たちが現れて

バケツリレーで火を消し忽然と消えた!

という伝説もあったり。

 

いまでも境内には数か所

当時コゲた跡があるそうだが…

発見できず('Д')

 

その戦争の影響が濃く出ているのか、

境内には前橋出身の軍人を奉祀している護国神社とか

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傷痍の碑などがあったり。

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そして、ちいさな(しかも扉が閉まっている)

お稲荷様を発見。

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護国神社もそうだったのだけど、

社の柱にフック直打ちで「営築稲荷」…。

いいの?ここにフック付けちゃって…。

 

ともあれ説明書きによると、

前橋城再建の工事の安全の願ったお稲荷様らしい。

確かに、小さいながらも立ち姿はステキ。

 

近くに女性器信仰かしらと思うような

謎の造形の石とかもあったりしたけど…

なんだかわからずじまい。

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ちなみに、

今日何度か話題に上がった「前橋城」は

現在の県庁の位置にあったそうで。

 

利根川の氾濫に遭った後、

「もしも江戸城が攻撃されたときの避難場所に」

という意味を込めてかなり強固に改修されたらしいが…

 

完成して間もなく大政奉還となってしまったため

それが裏目に出た。

明治政府からしたら

敵である江戸幕府が建てた要塞のようなもの。

そんなものは早めに壊しておけ!

ということで現在は、県庁のはす向かいに

「前橋城」というラーメン屋があるばかりである…(´・ω・`)

 

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いやはや店の名前が「支那そば」かという勢い。

毎日通勤で前を通ってるけど…今度行ってみようかなあ。