とまのす

ちいさくゆっくり、民俗学。

鹿と阿闍梨と早池峰神社。

さて、前回は
早池峰山の山開きで奉納された権現舞について少し書いてみた。
その際、岳神楽の本拠地・早池峰神社にも少し触れたかと思う。
大償神楽と岳神楽を合わせて早池峰神楽と呼ぶわけで、
出来れば3つの神社を見たいなぁと思ったのだが…。

早池峰神社と大償神社というのは そこそこ離れている。
そして、2つの神社へ神楽を伝えたとゆう田中神社は
大償よりさらに南東。こんな位置関係↓である。
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ちなみに、田中神社の「たなか」は
「真中(ただなか)」の転訛とも言われている。
何の真中かと言えば、「内川目集落の」真中 らしい。
今回は残念ながら田中神社には行けなかったので、
詳しい紹介は またの機会に(/・ω・)/

とりあえず、花巻側から早池峰山頂へ向かうと
峰南荘さんとゆうロッジがあるが
その少し手前に早池峰神社への鳥居が立っている。
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一ノ鳥居は木造。注連縄の房が 何と表現したら良いのか
ネコヤナギの雄花のような全体がポワポワとした小さな楕円形。
フリンジのような房とは様子が違う。
形式は、4つの稚児柱を持つ「両部鳥居」となっている。
「両部とは、胎蔵界金剛界のことである」説があり、
曼荼羅の話?仏教っぽいな。と思った方が御察しのとおり
神仏習合を表した形式とされている。

まぁ確かに、早池峰神社はかつて寺院メインだったらしい。
ただ 昔は今ほど「寺だ」「神社だ」と分けてなくて
結構神社にお坊さんがお勤めに来たりしていたというし。
両部鳥居がある=神仏習合の神社だった
つまりそれ以外の鳥居がある神社は生粋の神道神社?
と区切って考えてしまうと山ほど例外は出てきそうだ。

さて、鳥居を通り抜けて ふと参道右を見ると、
やたら巨大な剣が!Σ(° Д ° )デカッ!
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剣とゆうことは お不動様か⁉︎どこにいるんだ?
と周りを探すと、なんだか気持ちの良い沢が。
そして丸太でできた橋の向こうに…
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いた!お不動様が 激しい迦楼羅炎を纏って!
漂うラスボス感!しかし、正面からは顔が見えない。
ので、さらに近づいてみる。
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お顔がなんとも特徴的!
不動明王といえば童子形。とゆうイメージが強いだけに、
面長で頰骨が目立つタイプはインパクト大だなー。

そして、その周りに咲いていた
同じ茎からピンクと水色の花が咲いている不思議な花。
なんてゆう花だろう?調べても名前がわからない。
詳しい方 ご教示くださいm(._.)m
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さぁ、続いて 二の鳥居は石造。
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私の知ってる注連縄と何か様子が違う…と思ったら、
なんだか 綯ってあるのではなく
軸に繊維を巻きつけたような感じの縄だった。
ゴボウか何か、頑丈な根っこみたいだ。
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さらに少し進むと、たくさんの花が素朴に咲く草地。
奥に何やら供養塔的なものが。
後で調べたところによると、歴代住職の墓所らしい。
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そしてついに第三の鳥居が登場。
注連縄の房が一つ取れているが、立派な木造の鳥居である。
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ここも、ビニール製だが先ほどの注連縄同様
綯ってあるのでなく横に巻いていくような感じ。

鳥居をくぐると、まもなく左手に土塚神社?木塚神社?
と書いてある石碑のようなもの。
前に、賽銭箱。コレについては詳しくはわからなかった。
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そして石碑の前の道を入ると、
格子の付いた御堂のようなもの。
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格子戸から入る光が反射して 全体が写らなかったが…
ガラス張りになっていて仏像などがキレイに飾られている。
真ん中に立像と厨子。そして御幣。その脇にエライ僧侶さん。
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あれ?神社なのに?と思われるかもしれないが、
コレは早池峰神社の前身「妙泉寺」の持佛堂。
ここらで早池峰神社の縁起を話すと、

まず、大同2年(807年)に田中兵部&始閣藤蔵という人が
早池峰山頂に姫大神を祀ったのが大モトらしい。
なんでもこの2人、別々に山へ猟をしに入ったところ
両人とも額に白い柄のある鹿を見つけたという。
その美しさに「どうにか捕らえたい」と追ううち山頂に導かれ、
両人は山頂で出会った。
2人が出会ったところで鹿は消えてしまったが、
2人は「神の導きだ」として山頂に社を建てることにした。
鹿が消えた場所が分からなくならないよう
各々の狩りの道具を目印に置いて下山し、
雪解けを迎えた春に再び山頂を訪れ奥宮を建立したという。

そしてこれに伴い冒頭で触れた田中神社も建立されたとか。
「内川目集落の」真中(ただなか)だから田中神社、と書いたが
この「額の」真中に柄のある鹿にちなんで田中神社、説もある。

まぁそれはさておき、その後 大火で堂宇や物上を焼失し
天下の霊地と名高いわりに落ち目になっていた早池峰山
天安2年(1300年)、越後から早池峰を訪れた阿闍梨円性が
この地に留まり一宇を建立したのが再興のきっかけとなっている。
その後 盛岡藩の鎮守 また南部氏の臨時要塞として復活するも
明治維新の廃仏棄釈により廃寺となった。
以降、ここは瀬織津姫を祀る早池峰神社となっている。
とゆうのが妙泉寺と早池峰神社のザックリした歴史だ。

現在、妙泉寺跡には
住職さんが住んでいた庫裡(くり)や
上の写真の仏像、仁王像の立つ随身門↓だけが残っている。
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中には、そこそこ大きな立像。
表面は剥がれてしまっているが立派なものである。
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さらに隋神門をくぐると、一気に神社感が増す。
拝殿手前の、向かって左側に小さめの社。
軒の下をのぞいてみると「白髭社」と書いてある。
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全国で白髭神社といえば、
道案内と海上安全の神・猿田彦か寿老人を祀った神社が多い。
だが、ここの場合は「白髭水」が由来ではないかと思われる。
白髭水というのは岩手周辺の方言というか言い習わしで、
「荒れて白波を立てる水」のことだそうだ。
(青森・十三湖にも白髭水の伝説があるので岩手限定ではなさそう)

この白髭水に関する伝説は2パターンくらいで、
①白髪の老人が毎日餅や握り飯を取りに来るので
 白い石を焼いて待ち構え、餅or飯だと言って渡した。
 それを口に入れた老人は熱さのあまり逃げ回り
 翌日見ると崖から落ちていた。という怪老人退治譚
②水が襲ってきた際に波の上には白髭の老人が立っていた。
 それから、氾濫した荒れる水を白髭水と呼ぶようになった。
 という、単に「人が偶然見た」ことに基づく言葉の由来譚

そして、①の物語と「白髭水」の由来を併せて
「老人は熱さのあまり雨よ降れと願い大水になった」
「退治の翌日から暴風雨になり人は祟りと恐れた」
だから、白髭の老人が降らせた暴風雨による「白髭水」。
というまとまりの良い形もある。

①は実は対象が鬼だったり山姥だったり
いろんな地方に様々なパターンがある。
人間が何か怪しいものに脅かされているとはいえ、
餅を取られたくらいで焼石を食べさせ殺害するとは…
人間のほうが鬼の所業ではないか。といつも思ってしまう。
(*_*;

そして、その白髭水が早池峰神社の何なのかというと。
伝説自体は白髭水伝説のパターン①と変わらないのだが
円性が餅を焼くと、毎日のように鬼婆or山姥がもらいに来る。
その後どうなったかは以下略なのだが、
なんと結末が微妙に①と違う。
老人が死んだあと例によって大水が起こり
何人もの村人が暴風雨の中で波上に立つ白髭明神を見た。
ここから何故か村人たちは
「円性さんは白髭大明神の化身だったんじゃ」
「山姥を退治するため白髭大明神が
 僧侶に姿を変えて村を訪れてくれたのじゃ」
「大水に乗って帰ってゆかれる」
という思考回路になったのであった!

長くなったが、つまり
白髭神社猿田彦でも寿老人でもなく
円性阿闍梨を祀った社ということになりそうだ。

長くなってしまったからあとは気楽に、
写真でも見ながらサラッと行きましょ
(*'▽')

拝殿前の狛犬は、口の中の球が動くタイプ。
子獅子も一丁前にエラそうでかわいい。
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拝殿内は工事中の様子。
ある方のブログを拝見したら、
かなりヘタウマな狛犬orコマ狼さんが居るらしいのだが…
どうも見られない雰囲気だ。残念…。
また来いよ、とゆうことか。

ちなみに、本殿も覆われていて よく見えないのだが
廃仏棄釈以前の「新山堂」とゆう建物が
そのまま本殿として使われて居るという。
拝殿内にも、お寺らしく鰐口が見られた。
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現在は神社なので、表には鰐口でなく鈴。
房になった持ち手のヒモに、
5円がたくさんしばってある↓のが印象的。
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岳の早池峰神社は南部家の臨時要塞 兼 祈願所
という立ち位置からも、その門は南部家の「向かい鶴」・
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拝殿向かって左隣には、山神社(早池峰権現社)。
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中を覗いてみると…
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山頂で見たのより大きな権現様がいる!
またいろんな地区の山伏神楽をめぐって、
いろんな権現様にお会いしたいなー(*'ω'*)

夏ですね。祭りラッシュ来ますね。
民俗芸能ラッシュもね。
女川の獅子振り披露会は2018.7.29!
北上のみちのく芸能祭りは8月第1土曜~!
(八王子まつり、ねぶたetcと被りまくりで体が10個くらいほしい)
太田市細谷の冠稲荷夏季例祭での獅子舞とか。
あとは富士吉田の火祭りとか。
安曇野熊野神社お舟まつりとか。
皆さんも、いろんなお祭りお楽しみください!