とまのす

ちいさくゆっくり、民俗学。

でか山めぐる青柏祭

さて、もう6月だというのに
今回はGW中に行った石川県・七尾の記事(;'∀')
どんだけサボるんだ、といいたいところである。
(いや、自分ですけど)

七尾の電車は落ち着いた あずき色。
凹凸多めのレトロな車体でかわいらしい。
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宵山
今回の目的は青柏祭(せいはくさい)。
巨大な曳山(通称・でか山)が登場する迫力ある祭りだ。
登場するのは3つの「山町」から出る3台の曳山。
その3台が山王社に集まるのが見どころらしい。

ということで、まずは その集合場所・山王神社へ!
※案内や地図によっては大地主神社と書かれている
七尾駅から徒歩10分ほど。
三角屋根のような装飾がある「山王鳥居」が立っている。
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実際曳山が集まるのは明日の昼だが、ちょっと下見。
鳥居から参道までには距離があり駐車場的スペース。
きっとここに並ぶのだろう。

この祭りの難しいところは、
3つの曳山が別々の動きをすること。
経路云々よりも時間差がかなりあるのだ。

例えばこの鍛冶町の山車↓は、
5/3の21時に地元である山王神社付近の三差路に停まり
しばらくはそこで写真を撮られたりしている(宵山)。
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両脇の商店と比べても、巨大さはお分かりいただけるだろう。
これが、青柏祭の曳山が「でか山」と呼ばれる所以だ。
そして21時半ごろ山王神社に向けて曳き出しが始まる。
本山では若衆たちが木遣り台(曳山前後の足場)に乗るが、
宵山では小さな子たちが祓彩(ザイ)を振る姿が見られる。
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未来の木遣り衆たち。こんなに遅くまで起きてて大丈夫か?
(既に22時を回っている。おねーさんはもう眠いよ…)
山王神社に到着するのは23時過ぎ。
そして鍛冶町の山車は神社で一泊し、明朝に動き出す2台を待つ。

次に動き出すのは府中町の山車↓
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日が変わってから動き出すので、
この曳行は「宵山」でなく「朝山」と呼ばれている。

雨と寒さに見舞われ 眠気も限界に達し
「午前1時は朝ではない!」と叫びたい管理人だった。
午前1時に画面奥の印鑰(いんにゃく)神社から曳き出し、
山王神社に到着するのは朝7時。
ほぼ夜通し曳いているようなものである。

そして その到着の1時間後。朝の8時。
最後の魚町の曳山が山王神社へ向かう。
魚町については「宵山」は無く、
この山王神社へ向かう曳行がいきなり「本山」。
※あと2町の本山と言えば山王神社から帰る曳き出しのこと

いや、でもそんな 全ての曳行を始終見ていたら
ひ弱な管理人は睡眠不足で倒れてしまうからね。
府中町↑の出発は見届けたし、
魚町↓も何とか曳行前に発見して写真に収めたので…。
今夜はもう寝ます!(と言ってこの後40分くらい道に迷った)
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ちなみに、手前に建っている電柱を見ていただくと
小さな赤いランプが設置されているのが見えるだろうか。
夜間、このでか山たちが電柱に当たらないよう
曳行経路にある電柱にはこのランプがついているのだそうだ。
加えて、電柱自体の高さも他の道より高くできているらしい。

そしてこの大きな車輪!
20tにもなる巨大な山車を支えるため、劣化は免れない。
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これだけの車輪の材料となる木はなかなか手に入らず、
国外から木を仕入れることもあるようで…。
これはもはや日本中の山車・屋台・曳山に言えることだが、
本当に維持費・修繕費を工面するのは大変らしい。

*本山*
さて、翌日の昼過ぎ。
管理人がぐっすり寝ている間に
府中町のでか山は山王神社に到着し、
のんびりゴハンなど食べている間に
魚町のでか山も 神社まで来たことだろう。

という訳で、再び山王神社前へ。
おおおおぉぉ!3台 揃ってる!
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そして昼過ぎ、
着いたのとは逆の順番で
山王神社からでか山たちが曳き出されていく。

*知恵の結晶・辻回し*
さて。ここで、
青柏祭の見どころの1つ「辻回し」を見てみたい。
秩父夜祭の「屋台」や京都祇園祭の「山鉾」もだが、
この青柏祭の「曳山」も例に洩れず操舵性がない。
自動車などは車輪の角度が変わるので舵が効くけれど、
基本的には「まっすぐしか進めない」ということだ。
ソレを様々な方法で方向転換させる辻回しは
多くの祭りで見どころとされている。

秩父夜祭では2本の梃(てこ)で屋台を持ち上げ、
軸になる芯棒を屋台の下に入れて回す。

祇園祭では山鉾の車輪前に青竹を並べ
その上を滑らせるように曳いて進行方向を変える。

青柏祭の曳山は 梃を使う点では秩父と似ているが、
なんと梃は1本しか使わない。
ザックリ言うと 梃子で曳山を持ち上げたら
曳山の車輪と90°軸のちがう小さな車輪を下ろし、
曳山を横から押して方向転換する。

人は多いが、辻回し1回に結構な時間がかかるので
場所さえ確保すれば写真には収めやすい。
辻に差し掛かったでか山は一旦止まり、
若衆たちが「ヤーンサーのドッコイショ」の掛け声で
方向転換させたい方の車輪に大梃子↓をかませる。
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45°ほどの大梃子に1人目の若衆が登り、
大梃子と直角に交わるよう角材↓を結わえ付ける。
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結わえ付けた角材と大梃子の先端で、
最初に乗った若衆を中心に数人で櫓↓を組む。
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そして櫓から大梃子の根元まで 若衆が次々に乗っていく。
木遣り衆やOBらしき人の唄う「大木遣り」が上がる。
歌詞の内容は目出度いものが多いが、
結構艶っぽい…というかもはや下ネタも少なくない。
この動画に関しては初っ端から下ネタ(´・ω・`)
「新幹線は~男か女かを問~えば、答えは男よ~」
さぁ、そのココロは!?続きはWeb(動画)で!

青柏祭(2018.5.4)大梃子と若衆

続きを聞くと、下ネタながらひねりの利いた理由で
「きっと渾身のネタだろう」と勝手に関心(笑)
こういうのは言葉遊び的要素も多くて、
しかもなんといっても唄なので語呂が良い。
(祭が終わってもふとした瞬間に脳内リピートされる)
何よりそれでテンション上がっている
楽しそうなおじさんたちを見るのが好きです。

まぁ管理人の趣味はさておき、
掛け声に合わせ全員で大梃子を上下に揺らしながら
少しずつ地面と同じくらいの角度まで下げてゆく。
すると梃子の原理で巨大なでか山が傾く。
人が多くてあまり写っていないが、
その間に「地車(じぐるま)」と呼ばれる車輪を下ろし
行きたい方向へ引っ張れるよう綱を付け替える。

地車は通常の車輪と90°違う方向を向いているので、
一旦これを下せば方向転換自体は一気に90°回せる。
そして、また地車を抜くために前述の工程を繰り返す。
遠くで見ていると何をやっているのか全く見えず
「えらい時間かかるなぁ。何してるのかなぁ」
と感じてしまうのだが、近くで見るとこんなに楽しい。

そして、少し時間をおいて最後に
昨夜山王神社に着いた鍛冶町のでか山が出発。
曳き出し前には「七尾まだら」が歌われ、
着流し風の法被を着た木遣り衆たちが舞う。


青柏祭 七尾まだら(2018/5)

宵山でも見られるが、
「これで今年の祭りも終盤」という
哀愁のこもった七尾まだらはいいものだなぁ。
と一人でしみじみ。

関東の山麓に住む管理人は船方歌にあまりなじみがなく
「七尾まだら」という名前が非常に気になった。
調べてみると「まだら」の語源はいくつもあり、
玄界灘の馬渡島(まだらとう)の船方が歌い始めた
曼荼羅から転じた言葉
など色々な説が載っていた。
ちなみに七尾だけでなく「輪島まだら」などもあるとか。

正直、自分で撮った動画を見ても聞き取れないが
「めでためでたの若松様よ 枝も栄えて葉も茂る」
というたった二節の言葉の 音を伸ばして伸ばして
なんと5分間かけて歌い上げるという驚異の祝儀唄。
青柏祭では木遣り姿で舞うが、
結婚式や祝い事では紋付き袴を着て舞われるという。

役付きの人だけでなく、
祭を見に来ている地元の人も結構歌える
というのが何だか「いいなぁ」と思ったり。
長野県民で言う「信濃の国」みたいなもんなのかなー。
(ちょっとちがうか?)
群馬ってそういうの無いなぁ。
みんな八木節唄えるわけじゃないし。
ちょっと羨ましい。

 

犬猿を弔う祭?

さて、祭りの様子を紹介してきたが
一体この祭りは何のために始まったのか?
というと 戦って相打ちになった霊犬と猿神のためだとか。

その昔、この山王社には猿神がいて
年に一度村の娘を捧げさせていたという。
しかし ある年。
その年に捧げられるハズだった娘の父親は
猿神が恐れているものを知るのである。
それは「シュケン」という名の者だというので、
父親は期日まで必死で「シュケン」を探した。
果たして、そのシュケンとは白い狼(山犬)だった。
人に害をなす猿神は もとは三匹であったが、
シュケンは二匹を噛み殺し一匹逃してしまった。
その一匹が山王神社の猿神であるとシュケンは語る。
そして父親を背に乗せ七尾へ駆けつけると、
祭の夜 娘の代わりに猿神の元へ向かった。
死闘は夜通し続き、翌朝村人が様子を見に行くと
二匹は相打ちとなって横たわっていたという。
シュケンを弔い、猿神の怒りを鎮めようと
七尾の人々は毎年神社に大きな曳山を奉納することとした。
これが青柏祭の始まりだという。
蛇足だが、
犬猿の仲というだけあって、猿神退治と言えば山犬。
信州にもこれに似た「早太郎伝説」がある。

山王神社と言えば猿は神使とされているので
その山王神社で猿神をやっつけてしまうのって
NGじゃないの?大丈夫?と思う部分はあるが…。
その猿神が居心地が良くて勝手に住み着いたのか
もともとはカミサマ的だったものが変質して害をなしたのか
というのは謎が残るトコロ。

気になることは色々あるが、
何週間たっても更新できないループにはまりつつあるので
この辺で一旦終了しますー。
(/・ω・)/マタネー