とまのす

ちいさくゆっくり、民俗さんぽ

カミの通い路、御神渡り。

2018年、節分すぎに5年越しの御神渡りが出た!
と聞いてから幾日が経っただろうか。
今すぐにでも見に行かねば!という気持ちのまま、
土日に研修が入ったりなんだりという災難(?)に巻き込まれていた。

 

諏訪への道

今週こそ行くぞ!
と思い立った週の中頃 長野に住む知人から連絡が。
「きみは御神渡りを見たか!」
そう頻繁に連絡を取るわけではない方から
このタイミングで こんな連絡が舞い込むなんて。
これはもう御神託と言ってしかるべきであろう!
(いや、神様じゃなくて知人からの連絡だけど)

朝に晩に昼休みに 諏訪の気温をチェック!
どうか私が会いに行くまで溶けないで…(ノД`)・゜。

そんな1週間を終え、金曜の仕事終わりでそのまま駅へ。
新幹線に乗り、長い 長い 篠ノ井線に揺られ…
この時間を利用して寝ようと考えていたのに
不思議なおじいちゃんに一時間以上話しかけられ続け…
とにかく着いたぞ!諏訪!
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御柱を曳いた縄!ヨイサー(/・ω・)/!
そして、下諏訪には何回も来ているはずなんだけど
なんか今回衝撃を受けたのが
改札にあった「万治の石仏」のプチレプリカ。
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え…。こんなん前もありましたっけ?
※調べたら2012年からあるようです。御柱に夢中で前回気付かなかっただけか…
とにかく、この日はさっさとネットカフェに赴き
早起きに備えて明日への英気を養うことに。
だってせっかく御神渡りというスペシャルな状態を見るなら
まずは超キレイな朝焼けタイムに見たいのだ!
(勿論、昼も夕方も見ます)

 

御神渡りを拝む

というわけで一夜明けて、諏訪湖に向かって出発。
諏訪に来るたびに会っていたけど、冬に会うのは初めてだ!
とドキドキしながら歩いていくと…

ふぉおおおおお(* ゚Д゚)!
今日も諏訪湖が美しい!
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凍ってる!ホントに凍ってる!
しかも天気に恵まれて富士山まで見える!
そのまま諏訪湖沿いに歩き、勧めてもらった赤砂岬へ。
岬から左を見ると「高木」方面へ伸びる亀裂。
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右を見ると、亀裂は「小坂」のほうから伸びている…
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本当に、うねるような軌跡だ。
絶対コレ見た昔の人「お諏訪さまは大蛇に違ぇねえ」ってなったはず!

ココから見ただけでは、
「小坂のシタテルヒメ姉ちゃんが弟嫁に会いに行った軌跡では」
と思ってしまうような亀裂の走り方だが、
湖畔に張ってあった御神渡りマップを見るとその全貌が分かった。
(分かりやすいように文字を加えさせていただきました)
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下座は「くだりまし」と読み、神様が湖に入った場所。
反対に上座は「アガリマシ」と読み、湖から上がった場所。

今いるのが赤砂なので、
一枚目の写真がアガリマシに向かう道。
二枚目のは、小坂から来たように見えたが
タケミナカタさんは小坂方面で諏訪湖に入ったのでなく
「すわっこランド」のあたりから諏訪湖に入り
お姉さんの居る小坂(小坂鎮守神社)方面にふらっと寄って
赤砂岬をかすめて下社のヤサカトメに逢いに行った…。
みたいな形の御神渡りである。

ちなみに「一之御神渡り」というのがメイン的な感じで、
初めに現れた南北方向に延びる亀裂のこと。
諏訪湖の下のほうに青線で示された「二之御神渡り」というのは
一之御神渡りと同じ方向(南北)に走る亀裂のこと。
古くは「かさねての御渡」とも呼ばれたそうだ。

今回は一之御神渡りがV字のような形なので
同じ方向に走っているかはわかりづらかったかもしれない。
結構短く、しかも上川が流れ込んでいるので
管理人が見に行った週には 既に溶けてしまっていたが…。
年によっては一之御神渡りと同じくらいの距離割れたり
綺麗に南北方向の亀裂が2つ入ることもあるようだ。

 

御神渡りをめぐるカミサマたちの話

ちなみにアガリマシの近くにペロッと出ているのが
「佐久之御神渡り」。
定義としては「一、二之御神渡りに交差するもの」だとか。
つまり東西方向に延びる第三の(?)御神渡りである。
佐久市にある新海三社神社のオキハギ(タケミナカタJr.)が
湖上を歩む父に会いに来た跡とも
小坂鎮守神社に居る姉に会いに行く跡とも言う。

ただし、日本神話で語られる系図を考えれば
小坂鎮守神社に居るシタテルヒメ
地祇・オオクニヌシと 水神・タギリヒメの子。
そのオオクニヌシ諏訪大明神タケミナカタの父でもある。
(めちゃくちゃモテるから奥さん何人もいる)
なので、新海三社から「姉に」会いに来るとすれば
オキハギとともに祀られているタケミナカタではないか。

オキハギが伯母・シタテルヒメの弟となるには、
タケミナカタはタギリヒメ(つまり異母姉妹の母)を妻に
ということにならないと成り立たない。
オキハギはヤサカトメとタケミナカタの子だというし、
タケミナカタと荒船の貫先神の子 説もあるが(; ・`д・´))
いくつかの伝承が混ざっていつの間にかそう伝わったと思いたい。

しかし、管理人は誰が誰の姉とか子とか細かいことより、
「昔の諏訪に住む人々は この夫婦神から
 養蚕や稲作など多くを学び共に暮らした時期が長く
 タケミナカタとヤサカトメ双方のことがとても好きだった。
 喧嘩して別居した二人をいたく心配していたが、
 御神渡りを見て(夏も通っていたが、御渡ができて村人にバレた)
 タケミナカタが別居後も下諏訪へ通い続けていたことを知り
 みんな 安心したし嬉しかった」
という話が好きだ。

美しいヤサカトメのことが大好きで 喧嘩したのは後悔してて、
でも通ってるのが人間にバレると恥ずかしいから…と
夜に舟を出して諏訪湖をコッソリ渡る姿。
「いつも威厳と生きる知恵を与えて神様らしくしていなきゃ!」
みたいな「神様の見栄」を張ってしまう可愛らしささえ感じる。
もう完全に妄想だが、
様々な知恵を与え 既に村人に慕われているのに
「バレたら村人に笑われちゃうんじゃないか…」という自信の無さ。
九州方面から逃げ伸びて新しい土地に住むと決めた神様の
「まだ完全なホームとは思えない」というような心細ささえ垣間見える。
なんだか余計、お諏訪さまが好きになれる民話である。

かなり様々な話が伝わっていて、
話によっては家を飛び出したヤサカトメから
諏訪湖の上が歩ける時だけ来ていいわよ」
「来てもいいけど一年に一回だけよ」
みたいな条件が出されるパターンもあるらしい。
ともあれ今年もタケミナカタさんのヤサカトメ愛は
バッキバキに絶好調である( *´艸`)
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それにしても
別居されるほどの喧嘩をする「些細な事」っていったい何なんだ。
浮気か?秩父の妙見ちゃんか、荒船の貫先ちゃんのことなのか?
(どちらも養蚕や織物にまつわるカミサマなのが気になる)
ともあれ、朝の御神渡りを心行くまで観賞したので風呂へ向かう。
まだ朝の6時だが、本日目指すお風呂はなんと5:30からやっているのだ。

 

下諏訪の温泉へ

何を隠そう下諏訪は至る所お湯だらけ。
駅前にもホカホカしたモニュメントがある。
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そして下社の程近く。
実家が風呂工事中で2日入れていなかったので
水道水の銭湯でもありがたく戴けるような気持ちだが…
折角なのでコチラで。
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下社秋宮の近所にある、旦過(たんが)の湯!
仏教に詳しい方は旦過という単語をご存知なのだろうか?
(管理人は調べるまで全く知らず…)

禅宗の修行僧のことを「雲水」というが、
自分の実家などの寺を出て修行用の寺に赴いた雲水さんは
初めに庭詰というものを行うとされる。
「玄関先で入門を乞うが断られ続け それでも乞い続ける」
というものだそうで数日間玄関先に居ることになるとか。
この時に寝泊まりに使う部屋が旦過寮だそうだ。

庭詰が終わると課されるのが旦過詰。
庭詰のときに泊まった小さな 満足な灯りもない部屋の中で
寝食以外はひたすら坐禅を組み続けるらしい!
コレをクリアしたら、そこで初めて入門が認められる。

旦過寮は永平寺総持寺のモノが有名らしいのだが、
長野もかなり仏教色も濃い土地である。
まぁ言わずもがな信州で一番有名な寺は善光寺だろうが、
この下諏訪にある有名な寺といえば「慈雲寺」。
下社春宮の鬼門を守るために、大祝・金刺氏が建てたお寺。
(勿論、開山したのは金刺さんではない。建長寺の住職さんだ)
このお寺は曹洞宗 つまり禅宗の寺で、
その雲水さんのために開かれた旦過寮が旦過の湯のモトだとか。
現在は建物もキレイで温泉ホカホカ~♪な感じだが、
実際に寮だった頃は やはり厳しかったのだろうか…。
ちなみに諏訪周辺には武田信玄公関連の温泉が山ほどあるが、
慈雲寺・旦過の湯ともに信玄公の庇護厚く、
特に温泉は「切り傷にも効く!」と武士たちも訪れたとか。
現在は脱衣所や浴場は地元のおばあちゃんだらけ。
「おはよー」「おつかれさまー」「お先ー」と挨拶を交わして
なんだか部活の朝練に来た女子高生の部室みたいだな。
とちょっと楽しくなった。

公衆浴場としてはお安く、
大人 230円と(首都圏の銭湯に比べて)かなり良心的。

そして、驚くべきは その泉温。まさかの58℃だという。
もちろん湯船の湯は水でうめてあるが、
それでも44℃と46℃の2択。あ、あついΣ( ゚Д゚)!
寒い中歩いて目は覚めていたつもりだが、
さらにもう一段階 目が覚めそうなパンチのある熱さだった。

数分後に入ってきた 地元のおばあちゃんが
「あらぁ、若い人には熱いでしょ。露天の方がぬるいよ」
と教えてくれたが、その頃には体は温まりきっていた。
(もう少し早く来てほしかった…)

後で調べて知ったのだが、
この旦過の湯 下諏訪一熱い湯なのだそうだ。
地元のおばあちゃんたちは平気で46℃に入ってはいるが、
お湯に触れていた部分だけクッキリと赤くなっていた。
いくら切り傷に効くとはいえ、傷がある状態で入ったら
目が覚めるどころではない激痛なのでは…。
まぁともあれ久々のお風呂な上 急速に体が温まり、
清潔感とか体温とか いろんなものが回復。
身も心もスッキリした状態で神社へ向かうことができる!

もう長くなってしまったので、
この後に行った神社はまた順次…!
↑さばくのが間に合っていない(´・ω・`)

*おまけ*
この後に行った上諏訪も、
間欠泉が見られるところや宿など温泉関連の施設が多い。
そして、上諏訪駅はなんとホームに足湯が!
入浴を終えて上諏訪に着いたのが8時だったのだが
残念ながら足湯は9時(いや、10時だったか?)からだそうで入ってみられなかった。
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