とまのす

ちいさくゆっくり、民俗学。

締めて寿ぐ、しめかざり。

あけましておめでとうございます
(=゚ω゚)ノ!

色々な体調不良や、仕事関連の研修やらで
気づけばブログを2ヶ月以上サボってしまった。大反省。

さて、そんな管理人だが 去年12月あたまに浅草へ行って
「新年を寿ぐ しめかざり展」を観てきた。

個人的に衝撃だったのは、
”しめかざり研究家”だと思っていた森須磨子せんせいが
なんと”グラフィックデザイナー”だったことである…。
(そこかよ!とツッコまれそうだが本当にびっくりしたのだ)

さて、本や商品名などで「しめ」かざりの表記を見てみると
「注連」の他にも「締め」「〆」「七五三」など様々。
何故こんなにいろいろな表記があるのか?ということで、
しめかざり…というか「しめ縄」のことから調べてみる。

*はじめての しめなわ*

日本の歴史に初めてシメナワが登場したのはいつなのか?
古事記にも日本書紀にも同じような場面があるが、
アマテラスが天岩戸から出てきた直後
「もう二度と隠れることが無いように」
とフトダマノミコトが岩戸を縄で封鎖したとされている。

この縄は古事記で「尻久米(しりくめ)縄」
日本書紀では「端出之(しりくへ)縄」と表記されている。

シ、シメ縄でなくシリクメ(ヘ)縄!?
どういう意味だ(;゚Д゚)?

双方に共通する「シリ」とは「端」または「最後」だろう。
そして「クヘ」の漢字を見ると「出ている」という意味のようだし、
一方の「クメ」を調べると「出る」or「組む」という意味だとか。
たしかにシメナワの端は藁が出ているor編んだり結ってある…。
どうやらこの「形状」を表した言葉がシリクメ(ヘ)のようだ。

蛇足だが、昔の人はトンボの交尾の状態を
「尻組す」と言い現わしていたようである。
今では「蛇の交尾の様子を模したもの」と言われる注連縄だが、
シリクメ縄だったころはトンボとも関係あったのだろうか…。

「シメ」の表記ゆれ問題*

さて、
では現在まで続いている発音「シメ縄」はどんな意味なのか?

この「シメ」は古く「標」と書いたようで、
「不可侵な」というような意味の言葉らしい。
身分の高い人間が占有する土地=標野(シメノ)などにも
その”境界”を表すため標縄(シメナワ)が張られたとか。
つまり、コチラは形状ではなく縄の「働き」を表す言葉。

その他「〆、締め」の字も用いられるがコチラは
その不可侵の場を閉鎖するという「働き」を表すモノか。
いやしかし…
締めるという言葉は紐状のものを固く結んだ状態も表す。
藁どうしを「撚り合わせた」縄の「形状」を表しているのか…?
むむむ(´・ω・`)

まぁ分からないことを追求するのはやめて、
最もよく見かける「注連縄」という表記の話に移りたい。
調べてみるとこちらの「注連」は中国から来た言葉らしい。

なんでも、昔の中国では家から葬式行列が出発したら
亡くなった方の霊が自宅にカムバックしないよう
家の出入り口に縄を張ったのだとか。
その縄を「注連」と呼び、その表記が日本に流入
「不可侵」の意味を持つ語「シメ」と出会い、
「注連とかいてシメと読む」という結果になったらしい!

*七五三縄とカミサマ集団*

だんだん注連縄のコト分かってきたような気がしますね!
(/・ω・)/ソウデスネ!
あとは「七五三縄」という表記だ。
これも熟字訓っぽいが、中国から来たんだろうか?

すると どっこい、コチラは日本発らしい。
(とはいっても陰陽思想など中国的な部分はあるが)
なんでもモトは 読んで字の如く、
下に7・5・3本の房を垂らしたシメ縄をこう呼ぶとか。
残念ながら管理人は そういうシメ縄には
未だ出会ったことが無いのだが…(´・ω・`)ショボン

この7・5・3本の房には
①それぞれの本数が特定の神様を表す!
②奇数であることが大切!
という2つの意味があるらしい。

まず、①については それぞれの藁房が

7本=神世(かみのよ)七代
5本=地神(ちじん)五代
3本=日向(ひゅうが、ひむか)三代

という神様の集団を表しているとされている。

神世七代とはイザナギイザナミ夫婦以前7代のカミサマ。
天と地ができる期間(=天地開闢)に居たとされる。
ちなみにそれぞれお名前は

●クニノトコタチ
●トヨグモ
○クニノサツチ(日本書紀のみ)
●ウイジニ&スイジニ
○ツヌグイ&イクグイ(古事記のみ)
●オオトノジ&オオトノベ(オオトマベ)
オモダル&(アヤ)カシコネ
イザナギ&イナザミ

●の神様は日本書紀古事記両方に登場するもの。
○の神様はどちらかにしが登場しないもの。

ザックリ言うと、それぞれの名前は
天と地/陰と陽さえ区別のなかった混沌から
天地が分かれ、草木が生じ、人が成る!
という「世界のはじまり」を神格化したもの。

次に「3・5」は内容がかぶっているが、
下記の①~⑤が「地神五代」。③~⑤が「日向三代」。

①アマテラス
アメノオシホミミ
③ニニギ
④ホオリ
ウガヤフキアエズ

さっきの七代より逸話も多く知名度が高いラインナップである。
七代は単純に現れた順であり親子関係は無かったが、
こちらの五代は神話上、実の親子である。

アマテラスとスサノオの誓約でアメノオシホミミが生まれ、
オシホミミと機織りの女神・タクハタチヂヒメの間にニニギ誕生。
そのニニギの妻・コノハナサクヤは燃える小屋でホオリを産み、
ホオリと結ばれたトヨタマヒメウガヤフキアエズを出産。
(フキアエズと育ての親・タマヨリヒメの子が神武天皇

余談だが「3・5」はこの5柱でなく
アマテラスとスサノオの誓約(うけひ)で生まれた

【三女神】
タギリヒメ
イチキシマヒメ
タギツヒメ

【五男神
アメノオシホミミ
アメノホヒ
アマツヒコネ
イクツヒコネ
クマノクスビ

 と考える場合もあるらしい。
いずれにせよ天津神(アマテラス系)の系譜である。

はじめは高天原にいたアマテラス一族(?)だが
葦原の中つ国(日本の国土)を統治するために
彼女は孫であるニニギを地上に遣わせた。
(というか息子に行かせようとしたがヘタレで駄目だった)

コレを「天孫降臨」というわけだが、
その降臨したのが高千穂。つまり宮崎県だ。
「七五三」のシメ縄もどうやら宮崎県に多いようなので…
アマテラス族(?)の地元であることを示す形なのかも?
(新潟の注連飾りでも7・5・3の房が見られるが)

…なんだかカミサマの列記で尺を使ってしまったが、
もうひとつの「奇数であることが大切」について。
唐突だが、陰陽説では「偶数は陰/奇数は陽」に分類される。

3/3に桃の節句、5/5に端午の節句、7/7に七夕の節句
というのがあって現代日本人にも馴染みの深い行事かと思うが、
これらは全て厄病や災禍を除けるための行事である。
これらの日は「陽」に分類される奇数が重なるため
特に陽の気が強く「悪い気を払い除けやすい日」とされたのだ。

同じような理由で、3・5・7という奇数を重ね
強い「陽」の気で神社に近づく悪い気を神域に入らせまい
とするのが七五三のシメ縄であるという。

また、シメ縄は神域との大事な境界であり綻んでは困る。
奇数は「割れない」ことから「切れない」につながり、
奇数の装飾により丈夫なしめ縄となる!ともされたようだ。
そのため「5・3・1」本の房を垂らしたシメ縄もあるらしい。

*しめかざり色々*

なんだかもうこのまま注連縄の話で終わるのではないか?
むしろ話長くて疲れてきたし、この辺で終わりでいいよ…。
という感じになってきた方も居そうなものだが、
肝心の注連飾りについてまだ何も触れていない。
ので かまわず続けるが、
各自 休憩するなり中断するなり良きに計らってくだされ。

さて、この注連飾りというヤツは
松の内」に他県へ旅行に行くと必ず新種を発見する。
キリがない感じがテンション上がるというか、
疲れ切ったところでまた知らない形の飾りに出会うと
テンションが上がり 更に別の形を求め足を延ばしてしまう…
チェーンスモーカーならぬチェーンシメナワー。
もはや依存症に認定されるべき領域に近づいている感もある。

まぁそれは冗談としても、
実際キリが無いので一般的なモノを見てみたい。
(拙い絵で、伝わらない部分もあるかと思いますが…)

私は関東在住なので、
あくまで関東で一般的なモノ ということになるが…
普通の家庭で玄関先に飾るといえばコチラのいずれかだろう。
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玉飾りは、輪飾りの下に藁を垂らした形のものが土台だが、
扇や水引、鯛・海老・橙、ウラジロユズリハetc…
所狭しと縁起物が装備され、もはや輪の部分は見えない。
酉の市の熊手さながらである。

一方の輪飾りは、それに比べると装飾がアッサリで
最近は花屋さんなどでも「アレンジメントの延長」的に
洒落乙な可愛らしいものが売っていたりする。

あとは、さらに簡易的な「輪〆」だろうか。
コチラは水回りや台所などに設置するモノ。
敷地内にいるカミサマのところなどにも飾る。
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なので、うちの場合で言えば
年末に来年のための御札などを買ったときに
コレを7個くらい買ったりする。
玉飾りや輪飾りは華やかで人間の目も楽しませてくれるが、
コチラの輪〆のほうは純粋に神様に向けて
「ココは清浄なので来ていただいて大丈夫な場所です」
と知らせたり依代にするイメージがある。

ちなみに、
玄関に飾るような輪飾りと区別するため輪〆と呼んだが
この簡易版も関東では「輪飾り」と呼ばれることが多い。
実際「輪〆」と呼ぶことが多いのは岐阜方面、
関西の一部では「ちょろ」と呼ぶ…など名称は地域によりけり。

関西といえば、京都などに行くとよく見る注連飾りがある。
下の絵のような牛蒡(ごぼう)締めに前垂れを付けたものだ。
真ん中に付いた札には左右に大きく「門」の文字。
その真ん中には「蘇民将来之子孫」と書かれている。
旅をしている牛頭天王を一晩泊めるという善行により
蘇民将来とその子孫のみが疫病の脅威から逃れた…
という話に基づくモノであると思われる。
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京都では祇園祭で配られる(いや、買うのか?)
粽(ちまき)を玄関先に飾っている家も多い。
蘇民将来の札も牛頭天王関係だし、
この牛蒡締めの飾りも八坂神社とかで売るんだろうか。

そして上の絵の右側。
長野県上田周辺の神社でよく見かけたのが
この「おやす」である。
見かけた時は何なのか分からなかったが、
お椀締めとも呼ばれ「カミサマの食器」らしい。
門の両わき(神社の場合鳥居の両足)に飾ったり
家の中の神様がいる場所に置いたりするようで、
実際ここに炊いたお米を入れる家もあるとか。

そんなことを調べていたら
おやすの作り方動画を見つけたので、
同じく長野で作られるというしゃもじと一緒に作ってみた。
(かなりミニチュアだが…)
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あとは、本来どこの地方に多い形か分からないが
淺草の住宅街で大根締めの注連縄で作った宝船を見たことがある。
そのほか、宝珠締め・豊年締めなど名前をあげたら本当にキリがない。
高千穂に伝わる、中国の「飾り結び」のような注連飾りも印象的だ。
そんなふうに、注連飾りの形というのは地域・家により様々。

余談だが、
年末年始に↓「餅と日本人」という本を読んだ。 

 

餅と日本人―「餅正月」と「餅なし正月」の民俗文化論

餅と日本人―「餅正月」と「餅なし正月」の民俗文化論

 

 

 その中に「家の数だけ餅の形や風習がある」
というようなことが書かれていて
餅を送ることは送る側と送られる側の関係を表すとともに、
送る側と送られる側の家同士で 信仰や風習が交わること
というようなことが書かれていた。

上で書いたおやすに関しても、
「簡単なものではあるが作れる人がかなり減ってきた」
 という背景があって動画が作成されたらしい。

大量生産したものを全国へ発送することも簡単になり、
離れた店のものもインターネットでポチるだけで届く。
離れた地域にも新幹線や飛行機で行けるようになり、
地元ではない場所で家庭を持つ人も昔より増えたことだろう。

そんな環境の中、
今はまだ残ってはいるものの
「地域性」というものはだいぶ薄れた気がする。
勿論、上記のような風潮も時代の流れであり
民俗というものは人の生活とともに変化し続けるものである。
なので「このころから全国に同じ型の注連飾りが増え始める」
という一つの流れとして見ることもできるのだが…。

しかし、こうした風習や民芸の形というものは
その地域の伝承や産業、気候風土
そしてそれに伴う人々の願いが詰まったものだ。
それが 引き継ぐ人がいなくなって消えていくのは
淋しいような気がする。

自分で作れないまでも、
うちの地域ではこの神社でこんな形の飾りを買って…
いつも公民館で年末に打っていたお飾りはこんな意味があって…
というようなことを是非知って
人や地域と出会うたび 風習が交わる感覚を感じる人が増えたらな。
と、少し思った。

というのも、今回
自分とは違う地方に住んでいる友人・知人に
地元のお正月のことを聞いてみたワケけだが…
こと正月飾りに関しては
「何か親が飾って正月過ぎるといつの間にかなくなってた」
というような話が多かったからだ。
(雑煮に関する多少の差異などは聞くことができたけれど)

しきたりに囚われろというわけではないが、
改めてこの正月は そういうモノたちが
(昔からそれらを守ってきた御年寄だけでなく)
今まさに仕事をしたり勉強に励む世代によって
この先も永く作られたり飾られて行くといいな…。
と願った管理人であった。

そんな願いも込めて、
宮崎に残る「亀飾り」風のモノを作ってみたが…
なんか見た時は確かしっぽが稲穂だったような気がする。
部屋にあるクラフトテープ的なヤツで作ったので、
しっぽ(蓑)が超剛毛に…(;゚Д゚)
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*追記*
本文の中で当たり前のように
「牛蒡締め」とか「大根締め」と言ったきり
特に説明もなく流してしまったが…。

注連縄には太さによっていろいろ名前がある。
ので、その一部がこちら↓
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(字を間違ってしまったが)鼓胴注連が個人的には好き。
中でも印象的だったのは大学のころ青森で見たもの。
鬼の居る鳥居を見に行って出会った注連縄なので、
撫牛子とかその辺か…?
(当時は今のように記録を残していなかったので微妙)
鳥居から下がった注連縄は、
この絵のように緩やかに中心が太いのでなく
細い注連縄の真ん中だけがポッコリと
ネズミを呑んだ蛇のように太くなっていて
その上のミニチュア米俵が付けてあったのを覚えている。

注連縄は1年に一度は換えるだろうけれど、
形状は毎回同じようなものを作るはずだ。
今年とか 青森に行く機会があったら、
また鬼鳥居を巡って あの注連縄に再会できたらいいなぁ

また、注連縄は藁の束を捩じって
その捩じった束をさらに二本三本と撚って作るわけだが…
その綯い方が右か左かによっても分類できる。
人が日常的に使う縄は「右綯い」
カミサマに使う縄は「左綯い」と決まっている地域が多い。
コチラ↓が「左綯い」。
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一方、一部の地域では祀られている神様の性別によって
男神は右綯い、女神は左綯いとされる場合もあるらしい。
皆さんも、正月に地方に行く機会がありましたら是非
地域の注連飾り 楽しんでみてくだされ(=゚ω゚)ノ
(注連縄なら一年中楽しめるのでこちらもオススメ)