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とまのす

ちいさくゆっくり民俗学。

歌舞伎町の絶滅危惧社・稲荷鬼王さま。

新宿二丁目の次は歌舞伎町!
ここのすぐ近くにギリシャ料理屋さんがあるのだが、
管理人はそこの入口ドアのデザインが気に入っていたので
東京にいる頃はよくこの路地を通った…
…という思い出。

ホストの顔写真看板があちこちに出て
枕営業の温床かというホテルが乱立している地帯…(´Д` )
そこから路地一本入ると急に神域じみる。

ちなみにこちら↓は裏側だ。
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裏から入ると、まずあるのは富士塚
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うず高く積まれた石のところどころに
「〇合目」と書かれた石碑が立っている。
そのことからも分かるように、
富士塚とは富士山のミニチュアのことなのだ。
ということで、この頂上にある小さな社は
コノハナサクヤを祀った浅間神社

管理人は群馬県人なので
浅間神社」という札を初めて見たとき
完全に「あさまじんじゃ」だと思っていたのだが。
神社に行くようになって、
あれは「せんげんじんじゃ」だったのだ!
と知ることとなった。

この浅間神社は古くからこの地にあったらしいのだが、
明治に入ってから稲荷鬼王神社に合祀されたそうだ。

ちなみに、
富士塚は富士山から持ってきた石で作ったり
富士山が見える場所に(つまり遥拝所として)作ったり
例大祭の日に祢宜さんが登ったりする場合もあるらしいが。

ここのは人が登れるほど大きいサイズではない。
そして当然歌舞伎町なので今や富士山は見えない。
材料に関しては確かに火山岩っぽいので
山由来のものなんだろう…という感じではあるが、
Wikipediaによると
「全国から取り寄せた石で作った」らしいので、
富士山限定でもないらしい。
全国て…広いな。どんな基準で取り寄せたんじゃい。

まぁ、このへんは山岳信仰エリアというか。
裏参道をはさんで向かいのこちら↓も石尊様で山岳属性。
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さて、いつまで裏参道に引っかかっていると
ぜんぜん本題に辿り着かないので…表にまわる。
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こちら↑が稲荷鬼王神社の鳥居。

*鬼の水鉢*
そしてこちらが
新宿区指定有形文化財の水鉢だ。
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鬼(力士だという話もある)が可愛い!
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無造作に置いてはあるが、江戸時代に作られたそうだ。
毎晩この水鉢から水を浴びるような音がするので、
作った人だか制作を頼んだ人が刀で切り付けたのだが…
その後、当人は病やケガに見舞われまくったらしい。
そして、ここに奉納されるに至ったのだ。

*熊野と三峯と狼*
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鳥居を入ってすぐの狛犬らしきものは、
「絶対頭欠けたから残った部分で彫りなおしただろ」
という八頭身っぷりで笑える。肩幅広いwww

拝殿脇の社務所に居た方に訊いてみると、
これは狛犬ではなく「山犬」らしいという。
つまり狼だということか( ゚д゚)!

が、肋骨も浮いてないし耳も垂れていないぞ…

まぁ鬼王権現は熊野出身で、
熊野は修験道の聖地。
狼が居ても不自然ではないか。

と、その場では軽く流したが
調べてみれば狼を眷属とする秩父三峯神社
熊野を模倣して作られた!と言われているそうだ。
それが証拠に、雲取山をはじめ秩父には
熊野と同じ地名が数多く存在しているという。

関東圏の人間のせいか、
「狼信仰=三峯」というイメージだが
熊野がそのルーツだったとは…。
まだまだ知識不足ですな。


三島神社の恵比寿様*
そして入って左側には三島神社
中には恵比寿様がお住まいだ。
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境内社とはいえ、なかなかの規模であるのに
ジャラジャラと鳴らす鈴がついていないのだが…
なんと'(*゚▽゚*)'
手水鉢の下にある水琴窟が鈴の代わりだそうだ。

ここの恵比寿様は耳が悪くないんだろうか?
京都の恵比寿様なんて、
「鈴を鳴らしても聞こえないから」って
拝殿横に叩くための板が設置してあったくらいなのに。
…と、言いつつ水琴窟の説明通り
苔の生えた飛び石に水をかけて聴いてみた。
鳴ってる鳴ってる(。-_-。)

賽銭箱にはちゃんと雨除けがしてあった。
神紋は丸に三ツ柏。
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長野の守矢神社の時に話したような気もするが、
むかしは御供え物の皿に柏の葉を使ったので
神社の神紋や神職さんの家紋は柏が多いそうだ。

ちなみにコチラの境内では 恵比寿様の縁日に
運がべったら付いてくる「ベったら漬け」市がある。

*稲荷鬼王神社*
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さて、いよいよこちらが本題。
鬼王という名前から「鬼を祀る」と言われたりするが
祭神は「鬼王大権現」であり鬼ではない。

もともと古くからあった稲荷神社に
熊野からお招きした鬼王大権現を合祀したことから
「稲荷鬼王神社」という名前なのだが。
賽銭箱を見ると、
稲荷社の稲荷紋と鬼王神社の三つ巴が
ちゃんと並んで彫ってある。
吸収合併ではなく平等な立場のようだ。
…とゆうかよく考えたら、
稲荷神社なのに狐が見つからないぞ!?
狼に食われてしまったのか

((((;゚Д゚)))))))
…冗談はさておき(でも狐がいないのは本当に不思議)
さっきの狛オオカミは変だったが、
コチラの拝殿脇の狛犬は気に入っている。
まず左の狛犬
毬を独り占めする子狛犬は、
まさにいたずら小僧といった表情で可愛らしい。
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そしてこちら↓が最強にかわいい。
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抑えようとする親コマの前足(手?)を
元気な前足でバシバシしながら
親コマの顎をなめてじゃれているのである!
ふぉおおお!かわいいぞ (´Д`* )!

 

*鬼王大権現*
…と、まぁ勝手にテンション上がったところで、
先ほどサラッと「鬼王大権現」という名前を出したが。

本地垂迹説において「権現」とゆうのは
神道の神々につける神号。
仏教の神々が人前に「現れる」ための
「権(=仮)」の姿がこの神様ですよ~。
とする考え方だ。

そして鬼王権現の場合
ツクヨミ・オオモノヌシ・アメノタヂカラオ
という日本神話でおなじみの3人を合わせた名前。
つまりユニット名に近いといってもいいのかもしれない。

しかし、これはどういう組み合わせなんだろうか。

太陽を象徴するアマテラスに対して
月を象徴するとも言われているツクヨミ
アマテラス姉ちゃんの弟である。
そんなすごい立ち位置に居ながら、
五穀や蚕の誕生に関する神話くらいにしか登場せず、
しかもその神話の中でついカッとなった結果
アマテラス姉ちゃんに嫌われている。
「もうお前の顔は見たくない」
として月と太陽は違う時間に空に昇ることになった
という話があるくらいだ。
(基本的にスサノオと言い、兄弟仲は微妙なようだ)

オオモノヌシは
オオクニヌシの和魂とも言われるが
荒魂なのではないか?
と言いたくなるような 祟りをも起こす激しい神。
というのも彼は蛇の姿をした水神・雷神である。
川の流れも雷(嵐)も、
豊かな土壌を里に運び土地を潤す一方で
土砂崩れや鉄砲水として人の命を奪う脅威でもある。
その姿の両側を体現した神さまなのだ。
五穀豊穣や酒造りの神とされることが多い。

最後に、アメノタヂカラオ
カタカナで書くと微妙なのだが、
漢字では「天手力男」と表記する。
ももクロの楽曲でこの神様を知った人もいるだろうか)
読んでの通り、剛腕無双な神様。
アマテラス岩戸ひきこもり事件の際に
チラッと顔を出したアマテラスを見逃さず、
天の岩戸をその剛腕で押し開けて
彼女をモトの世界に引きずり出した神様だ。

その剛腕なイメージから
スポーツ選手に人気のようなのだが、
ようは、アマテラス(=太陽)を取り戻したということだ。
農耕神としてのイメージは薄いが、
無くてはならない太陽を取り戻したのだから
もうすこし怪力以外も評価されてもいいんじゃないかなー。
というところである。

そうかんがえると、
三人とも農業・穀物と関わりがありそうだ。
先輩の稲荷社ともうまくやっているのかもしれない。

狼も、
農作物を荒らすネズミやイノシシを狩るとして
修験道とは別に農業という文脈で
庶民から厚く信仰されていた動物だし。

さて、先ほども話したように
この神様は元々熊野にお住まいだったカミサマ。

しかし実は
今や、地元・熊野にも鬼王神社は無いのである。
ということでココは(稲荷と合祀されてはいるが)
「日本で唯一鬼王の名前が残る神社」
となってしまったのだ。

熊野にあった社が一体
どれくらいの規模だったかはわからないが、
本丸がつぶされても地方で生き残るほど
方々に勧請されなかったのかもしれない。

鬼王という名前から「鬼の神社」として、
また「鬼王丸」の幼名を持つ
平将門にゆかりがあるのではないかという視点で、
幸い神社好きの話題に上ることは多いのだが。

そうした絶滅危惧社だというあたりも含めて
末永く参拝者が絶えないことを願うばかりである。

ちなみに、この稲荷鬼王神社
鬼を祀ってはいないというものの、
節分祭には「鬼は内、福は内」と唱えるetc
方々の鬼を祀る神社同様、鬼にやさしい神社である。

*豆腐絶ちと撫で守り*
ここのお守りの中で、
授与所(売り場)に飾られていないものが1つある。
それが「撫で守り」である。
名前の通り、御守りで皮膚を撫でると
病気平癒、特に皮膚疾患に霊験があるとされるのだが…
コレがタダではもらえない(お金的な意味ではなく)!

願いが叶うまで、
豆腐を断つ(=食べてはいけない)のである。

なぜ豆腐かという詳しい理由はわからないが、
以前はこの豆腐絶ちのために神社の参道に
豆腐屋が数軒立ち並んでいたそうだ。
※絶つのだから豆腐屋は要らないだろう
 とお思いだろうが、
 絶つ前に神社に豆腐を納めるのである。

仏教の修行として「穀絶ち」という
身の清め方があるそうなのだが…。
穀物はさすがに絶つと生命がヤバい、
ここはひとつ豆腐で(=゚ω゚)ノ!
というところだろうか。

江戸時代はタンパク源なんて
そう豊富でなかったであろうコトを考えると
豆腐絶ちというのも
御利益相応の対価だったのかもしれないな。

というところで今回の散策は終了~。

ちなみにこないだまで、
Hauntedじゃんくしょん」の作者
夢来鳥ねむ先生が境内に原稿の展示をしたりして、
3.11の震災を振り返る漫画展をしていたりもした。

管理人が中学時代に一生懸命読んでいた
めちゃくちゃセクシーなトイレの花子さんや
可愛すぎる二宮金次郎が登場する漫画である。