とまのす

ちいさくゆっくり、民俗学。

鬼鎮神社の律儀な鬼。

埼玉県嵐山町にある鬼鎮(キヂン)神社。
西のほうの人にはよく「埼玉にも嵐山があるのか」といわれるが、
嵐山の読みは「あらしやま」でなく「らんざん」である!

武蔵嵐山駅から15分くらいで難なく到着。
ただ、あいにく夕方の散歩タイムらしく
おばちゃんと犬があちこちから歩いてきてはこちらを見る
気にしないぞ。視線攻撃なんて…(゚д゚lll)

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石の鳥居に木の扁額という組み合わせ↑。
中心部は何かで焼けたのか汚れなのか黒くて読みづらい。

拝殿で気になったのは、
鈴も鰐口もない(=鳴らすものが何もない)こと。
単に修理中とかいうことがあるだろうか…?f:id:ko9rino4ppo:20160618211741j:image

名前に鬼がつくために
「鬼を祀っている」と言われるようになった神社ならば
全国にいくつもあるわけだが。
実際に鬼を祀る神社は全国で4つだけとも言われている。
それが、この埼玉・鬼鎮神社。あとは青森・福岡・大分。
(福岡のは白山神社境内社だから数えないのか?)
観光サイトなどをあたってみると
畠山重忠が館を築いた際、鬼門を守るために建てた」
と書かれていることが多いようなのだが。
私は民話として語られる鬼と刀鍛冶の話が好きなので
そちらを紹介したい。
 
昔、刀鍛冶に弟子入りした一人の若者がいた。
彼がある日、刀鍛冶の娘さんを嫁に欲しいと言ったときに
師匠は 「一晩で刀を100本作れたら良いぞ」という条件を出した。
冗談だったかもしれないし、
絶対やらん!という無理難題だったかもしれないけれど。
そこから若者はすごい勢いで刀を打ち始めたワケ。
夜中になってもやめない若者を師匠が覗きに行くと
その姿は角が生え、肌は赤い鬼だったのだ。

人間離れした、本当に100本作れそうな勢いだった。
しかし、最後の一本を作り終える前に夜は明けて
力を使い果たした鬼は死んでしまう。

人間ではなく鬼の力を解放したにしろ、
一瞬で100本作みたいなチートな神通力を使うでもなく
体力の果てるギリギリまで律義に刀を打ち、
ましてや力にモノを言わせて娘をさらったりもしなかった鬼。

そんな彼をかわいそうに思い、
刀鍛冶と娘や村の者たちがここに
祠をつくって鬼を弔ったのがこの神社の始まり。
と、いわれている。

拝殿の中をのぞいてみると、
御覧のようにきれいに整っている。
そして、小さくてよく見えないのだが
大幣や太鼓のある当たりの左右に鬼の像がある。
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瓦にも「鬼」の文字。ちゃんと鬼瓦もあった。
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さらに、鬼の一家の絵のようだが…
なんと、赤鬼の夫婦から青鬼が生まれることがあるようだ。
そしてなんと鬼の乳児はピンク色…だと…?
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まぁ、変なところでツッコむのはやめるとして。
この話のなかで
鬼と分かった時点で問いただしたり殺したりせず
鬼のほうも条件をクリアできないから強引にということもない。

この雰囲気からは、
「村人と鬼の間にあまり大きな隔たりがない」
ように感じる。

鬼伝説の鬼の見方、
何の隠喩であるかという考え方には数種類あるが。
ここで関係ありそうなのは大和朝廷の地方平定というよりは
やっぱり製鉄だろうか。刀鍛冶も出てくるし。

製鉄に関しては、
「桃太郎の鬼退治」のモデルとなった
吉備(岡山県)の温羅(うら)が有名。
彼は朝鮮半島から九州or出雲に渡来したとの説があり
今も残る岡山県総社市奥坂の「鬼ノ城」を本拠地として、
その製鉄の技術をもって地域を支配したと言われている。

彼が製鉄民であったことは、
その技術をもって支配したという記述のほか
彼の妻が阿宗神社の祝(神官)の娘であること、
その阿宗神社の「鳴釜神事」の使う釜は
地元鋳物師の作ったものと決まっていること、
妻の関係地・阿曽郷では製鉄遺跡が多く残されていること
などにより裏付けられる。

つまり民話の中の鬼は製鉄民のことである場合がある。
ということだが…
この鬼鎮神社の伝承を見てみると、
すでに製鉄技術を持っているはずの製鉄民が
刀鍛冶に弟子入りするというのは少し不思議な感じ。
製鉄集団と鍛冶師の位置関係というか
分業の具合が全然わかっていないせいか(´Д` )?
ともかく、刀鍛冶であれば製鉄民に偏見を持ったり
文化が大きく違うということもなかったのかもしれない。
(我ながら浅い結論ではあるが)

お隣、長野では
(といってもカミサマ文化圏は結構違っているのだが)
侵入(?)して八面大王を征伐した坂上田村麻呂
(安曇族のことか?)のほうが製鉄技術をもっているし。
こないだ話した洩矢神
製鉄技術でタケミナカタに負けて座を譲ったとされる。
(負けたということは、技術自体は持っていたということか)

おそらく、両方とも史実に基づいているとすれば
時代は長野の神話・田村麻呂東征のほうが古そうなので
その辺をきっかけに武蔵の国あたりまで製鉄が盛んになったか。

ん、何の話をしているかだんだんわからなくなってきた。
本題は長野じゃなくて埼玉ね。
八面大王やら洩矢神じゃなく、鬼鎮神社ね。

3日前に長野から帰ったばかりなので、
まだ頭が長野なんだな
どうしても思考が長野方面に吸い寄せられてしまう…
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鬼鎮神社の絵馬はこんな感じで、
バッグから下げておきたいかわいさ。
情報によると、このデザインの御守りもあるらしいのだが…
境内には人がいない。
例祭とか節分の日しか買えないのかもしれない。
ちなみに、鬼も赤鬼と青鬼だけではないと思うのだが
だいたいこの2人(?)が対で登場するのは理由がある。
青い鬼は静鬼、赤い鬼は励鬼とも呼ばれ
魄の静と動を表している。
 
人間にとって恐れの対象は、
おもに激しく祟り災いを起こす励鬼である。
というわけで、追儺・節分の行事には度々こどもたちが登場する。
赤鬼と同じ「動」の性質を持つ者こそが、
赤鬼を祓う力を持つとゆう考え方らしい。
 
まぁそんなわけで、
全然まとまっていないけれど
鬼鎮神社&キュンと来る伝承の紹介と
ちょっと製鉄-鬼の関係の話でした。
まとめが雑ですいませんね、毎度毎度。
(;´Д`A