とまのす

ちいさくゆっくり、民俗さんぽ

タケイワタツのおうちが壊れた…!

昨日、阿蘇で大きな地震があった。
管理人も阿蘇のあたりや
佐賀・宮崎・長崎にひとりづつ知人がいるので
とりあえず安否確認など送ってみたが。

そんな私のところに
東京の知人たちから次々連絡が。
阿蘇神社倒壊したって?」
阿蘇神社つぶれたけど大丈夫なの?」
阿蘇神社が…かみさま平気か?」
…うちは阿蘇ツ比古の安否確認本部じゃありません
|д゚)!
あと、スピリチュアル系じゃないので
神様自体が大丈夫かとかはわかりません( ゚Д゚)!

いや、きっと神社好きな私の
精神ダメージを心配してくれたんだろう…。

確かにショックだったよ。
ニュースに映った楼門はつぶれてるし
上空から撮った動画も境内めちゃくちゃだったし。

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でもそれよりYahooニュースで
高校生が「地域の宝が…」と肩を落とした
という記述があって
学生が一神社のことを
ハッキリ「宝」とまで言えることに感動していたんだけど。

ともあれ6人もから連絡がきたので、
何かしなくてはいけないような気がして
高崎の2つの諏訪神社に行ってきた。

まず、群馬県高崎市箕郷町の「卜神諏訪神社」。
剣聖・塚原卜伝ゆかりの神社と言われているそうで
この地名自体も卜神というのだが。
ともかく主祭神タケミナカタ
とくに奥様・ヤサカトメさんにワンカップ大関を!

そして高崎駅ちかくの上中居町にある諏訪神社
(通称:ひいらぎ様)
にもお参りお参り!
どうか阿蘇神社ならびに阿蘇大神に力を!
(ノД`)・゜・。

*健磐龍と八坂刀売*
さて、なぜ私が諏訪神社に行ったのかのハナシ。
べつにタケつながりで間違えたわけではない。
(;´∀`)
阿蘇神社主祭神は健磐龍(タケイワタツ)だが、
彼を祀っている神社はうちの近所に無い。

なので何とかこの神様につながりそうな神様
ということで八坂刀売(ヤサカトメ)を選んだ。

ヤサカトメは長野の諏訪大社では
下社に祀られているわけだが、
そこの大祝(おおほうり=神職さん)は
金刺氏の人々が代々務めていたと言われている。

この金刺氏の祖となったのが
建稲背(タケイナセ)という神様で、
彼は阿蘇神社・タケイワタツの息子なのだ。

だから、ヤサカトメさんに
あなたのとこで神職を務めていた人たちの
ご先祖様の土地が大変ですよ。お守りください!
(ノД`)・゜・。
とお願いしに行ったわけ。

ワンカップ大関買うお金があったら
その分を被災者さんたちに寄付しろ!
と怒られてしまいそうだが。
知人に非常食なども送ったので許してください。

タケミナカタとタケイワタツ*
ところで、イワタツさんと関係が深そうなのは
何も奥さんのヤサカトメだけではない。
諏訪の上社にいるミナカタさんは
名前だけでなくイワタツさんと似たエピソードが。

それが湖を決壊させて土地を拓くというもの。

タケイワタツは阿蘇山カルデラ湖を見て
その大きさに感心し気に入った。
苦心の末に湖を蹴破って湖底の大鯰を退治し
無事、その地を拓いた。

ナマズですよ。タイムリーすぎ。
でも、
このナマズは別に地震の象徴ではなく
土地の神というような気がするわけで。

今回九州に知り合いに聞いてみたら、
九州って案外地震の少ない土地らしく。
今回も
地震の規模にもビビったけど、
 まず滅多に無いから地震自体にビビったわ!」
と知人は言っていたし。
地震抑えの神社とかも海沿いが多いわりに
ぜんぜん無いような気がする。

ナマズは魚ではあるけれど
「水」でなく「土」の属性とされるので
カルデラ湖の大鯰も元々は
蛇と同じく山自体の神様だったのかも?

さて、一方で長野県に残る「小泉小太郎伝説」。
小泉孝太郎ではない(;´・ω・)
諏訪湖に住む龍が産んだ(でもなぜか人の)小太郎は
自分は育ての親である人間の子だと疑わなかった。
しかし、ある日出会った龍に
「あなたは私の子だよ」ということと
「私はタケミナカタの化身よ」ということを知らされる。
そして龍にまたがって湖を突き破り
現在の長野を拓いたという。

しかも、
タケミナカタのお父さんは大国主
タケイワタツも大国主の孫か曾孫と思われる。
※イワタツの父・神八井耳(カンヤイミミ)は
 オオクニヌシor息子のコトシロヌシの子らしい。

この2神の関係は気になるところ。

氏神様と氏族*
ところで
タケミナカタはもともと長野に居たのではなく
国譲りを迫ったタケミカヅチに追い回されて
諏訪湖に逃げ込んだことになっている。

そしてそこにいた土着の神・洩矢神を下して
諏訪の神様の座を奪ったわけであるが。

神話での神様同士の争いは
その神を氏神とする氏族の抗争の比喩であり、
また土地を訪れた神が 土地の女神と婚姻を結ぶのは
その土地を治めたことを示すとも言われている。

ミナカタさんも例外ではない。
コテンパンにやられる様子が詳細に書かれたのは
国譲りを迫ったタケミカヅチが藤原の氏神であり、
藤原氏が権力を誇示するため
「おらが氏神様は超つよいんだぞ!」
ということでそのダシにされたらしい。

そして逃げ回った挙句に諏訪に居場所を得るため
土地に居た洩矢神様を下したと言うが
これも移民と地元民の抗争を表現しているらしい。

ミナカタは水方、南方とも宗像の訛りとも取れることから
いずれにせよ九州方面の水や海に関連深い民の神と解釈される。
そこに中央の権力(天ツ神であるタケミカヅチ)が押し入り
その土地を追われて北方の内陸(諏訪)に流入した。
漁民(タケミナカタ)は漁業で生き抜くために
水辺に集落を構えていた狩猟民(洩矢神)を追いやった。

みたいな解釈が、
今のところ一番多いようだ。

諏訪大社の大祝は諏訪氏が司ったものの
洩矢神を信仰した守矢氏も筆頭神官として
一定の権限を持ち続けた。

そして、今もなかなかナイスな
「神長官守矢資料館」というものが残っていて。
(なんと御頭祭の復元展示がある)
この生々しい祭りを守矢氏が執り行ったというあたりも
彼らが狩猟民だったことの裏付けな感じがする。

と、阿蘇地震やらタケイワタツの話をするつもりが
なんだか諏訪神社を通り越して
諏訪大社の話になってしまったのだが。

なぜって、あれですよ。
もうね、頭の中は御柱モードなんですよ。
こないだ山出しを見に行って、
来月は仕事の休み次第で
里曳の どのあたりが見られるか…
って、今ハラハラしながら勤務表を待ってるんですよ!
(∩´∀`)∩

でもおうちがこわれたイワタツさんに
元気になってもらいたいのはホントなので許して!

まぁ、神社は
人が神様とチャンネル合わせやすいように作ったもので
それが壊れても神様自身にしてみたら
家の電話線がちぎれたくらいのダメージじゃないかなー。
って勝手に思ってるんですけどね。

ともかく
力盛り返して阿蘇のナマズを抑えてもらわないとな!

*おまけ*
「まんが 日本昔ばなし」のオープニングは
皆さん見たことあるんじゃないかなーと思うのだけど。

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あの「たつのこたろう」というのは
さっき話した小太郎伝説が長野各地に散らばっていたのを
再編集して一つにまとめた話。
で、発音を聞くと「龍の子 太郎」に聞こえるが
小泉小太郎なのだから「龍の小太郎」ではないか…
いや、むしろ厳密には「龍の子 小太郎」では…。
と見るたびに思っている。