とまのす

ちいさくゆっくり、民俗さんぽ

「父親が娘を殺す話」芝正夫

 

 

 

 

父親が娘を殺す話―女人犠牲譚から福祉民俗学へ
 

 

 

 

 

⚫︎差別の構造

 

 

・障害者であることを原因に忌むというよりは

  「唖や白痴が出るのは氏神への信仰が薄いため」という戒め。

 

 →村から精神薄弱者が出ることは信心が薄い証。

  その考えが、恥ずかしい・隠したい・殺すべきという考えの原因に。

・しかし、差別のキッカケは「欠落」に限らない。

例:東京老舗の牛肉屋と「牛娘」の話

     非常に美しい裕福な老舗の娘だが、

     結納をすると夜には娘が正体(牛の化物)を現す。

     その為、男たちは逃げ帰るか化け物に殺されるとされた。

→経済面や容姿による「優性」への妬みも差別の原因になり得る。。

 

⚫︎差違と保護

・福子思想…精神薄弱の子を「福子」「福虫」「宝子」(家に福を招く存在)とする風習があった。

 

曹洞宗の信仰が厚い地域に多くみられるともいわれる。

例:長野県下伊那郡上村の風習

     兵庫県竜野市の「お富さん」

 

 

 

・視覚障害者が口寄巫女になるという風習

 

→身体的に欠損のあるものが、

  それをしても余りある霊的能力を身に付けることで

  共同体に居場所を確保する。

 

→共同体の住人の精神生活をリードし村の均衡を保つ役割を担う。

 

・北陸の海岸地帯では、

  白痴を大切にすると生まれ変わってクジラになり、

  浜によって村を富ませてくれるとされた。

 

⚫︎「欠けたもの」の霊力

→ダルマも片目を入れて願を掛け、

  両目が入った時に神の役割を降りる。

 

 

 

参考:井伏鱒二「へんろう宿」

 

メモ:奈良県新疆荘苑(精神薄弱者更生施設)

      開祖・尾崎増太郎→女性や弱者の開放など福祉的思考の先駆。